成人式「延期」いつまで?【新型コロナ 学生リポート】(27)

迷った末、振り袖姿を両親に見てもらうことにした

 直前の緊急事態宣言によって、大きな変更を余儀なくされた私たちの成人式。オンライン開催や、中止など、参加する新成人だけでなく、コロナ対策に細心の準備を進めていた関係者も、誰もが苦渋の選択を迫られました。そしてもう一つの選択肢は「延期」。終わりの見えないコロナ禍。「延期」とはいったい、いつまでを指すものなのでしょうか。(法政大学・星柚花)

 

自主隔離の日々に

 

 「感染拡大に歯止めがかからない現状を踏まえ、成人式は延期とします」。2020年12月18日、地元・福島県での成人式に備え帰省の準備をしていた私は、残酷なニュースを突き付けられました。世界中に暗い雰囲気が漂う中、かすかな希望として待ち続けていた日が、遠ざかっていってしまいました。

 この春大学に入学した私は、緊急事態宣言などもあり、下宿に入居できたのは3月も終わりのこと。オンライン授業で人に会うこともなく、課題に追われる毎日。見知らぬ土地での一人暮らしは不安でいっぱいでした。成人式に合わせた幼馴染みとの再会は、そんな日々の心の支えでした。

 年末にかけて感染状況が厳しさを増す中、帰省にあたっては2週間の「自主隔離」が必要でした。外には出られないため、冷蔵庫の食料品や即席麺、日用品が減っていきます。「帰省までもつだろうか」と不安を抱くこともありました。徒歩10分のところにあるコンビニに行くことも、郵便受けを見に外に出ることも憚られる毎日。「寂しい」「虚しい」などという言葉では言い表せないほど辛いものでした。それでも、振り袖を着て、久しぶりに会う友人達と写真を撮って、「大人っぽくなったね」と言いながら笑い合うのだと、信じていました。突然の延期は、かすかな希望を打ち砕いてしまいました。山梨県の大学に通う友人との2年ぶりの再会や、同窓会もなくなってしまいました。

 

成人式の開催と延期を知らせるはがき

 

「レンタル」延期は難しく

 

 中止でも、オンライン開催でもない「延期」は、私たち新成人にもう一つの難題を突き付けています。首都圏に住むあるメンバーは、振り袖のレンタルや成人式に使う小物を用意していて、その総額は22万円にものぼったそうです。こちらも自治体が直前に延期を決定。しかし、振り袖のレンタルは延期できません。成人式に合わせ予定通りレンタルし、写真だけを撮る選択肢もあったそうですが、「神社などで写真を撮れば結局『密』になってしまう。写真も『前撮り』してあったので、返金を選んだ」と話します。返金額はわずか2万5000円でした。買えば一着40〜50万円とも言われる振り袖。友人も多くはレンタルを選んでいますが、決して安いものではありません。延期された式に合わせて振り袖を着るべきなのか、多くの友人が悩んでいます。宙ぶらりんなまま、希望が遠くにかすんでいます。

 

 私はもう20歳。お酒を飲むこともできます。今回の騒動で「式に意味はないのだから、リスクを冒してまでやる必要はない」という声も多く耳にしました。一つ言えるのは、「大人としての自覚」を感じる一生に一度の機会を奪われた多くの仲間がいることです。

 迷った末に、私は予定通り帰省することを選びました。成人の日の2日前、私の振り袖姿を見て「感動して涙が出たよ」と喜ぶ両親を見て、2週間の努力が少し報われたような気がしました。

 成人式は、子供とも大人とも言えない不安定な立場にいる若者達が、大人として社会的に認識される儀式とも言えます。その儀式の延期やコロナのために宙ぶらりんのままとなっている「大人」がいることを、忘れて欲しくないと思います。

 


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(2021年1月19日 12:14)
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