米留学から突然の帰国【新型コロナ 学生リポート】(9)

春休み直前のキャンパスにて。突然の別れを告げることになるとは夢にも思わなかった

 新型コロナウイルス感染拡大防止のため、政府が小中高の一斉休校を要請してから、1か月が過ぎました。終息の見通しはいまだ見えず、私たち大学生にもサークル活動の自粛や、始業の延期など、様々な影響が続いています。キャンパス・スコープでは、3月16〜19日のリポートに続いて、いま、大学生の生活に起きていることを伝えていきます。

 

大学は田舎だし...

 

 「ハーバード大学が閉鎖。留学生には航空券を手配──」。春休みが始まったばかりの3月10日、米国に留学中だった私は、ペンシルベニア州にある友人宅でそのニュースを聞きました。「私達の大学は田舎にあるし、大丈夫だよね」。トランプ大統領も、新型コロナウイルスを深刻な問題とみなしていないし、感染者も少ない。そんな状況で、私自身、他人事だと思っていました。

 

車飛ばし、520キロ

 

 3日後、状況は急変しました。通っていた大学から、閉鎖を告げる一斉送信メールが届きました。大統領も国家非常事態を宣言。「州境が閉ざされてしまう前に」と、慌てて520キロ離れた大学があるマサチューセッツ州まで、5時間車を飛ばしました。春休み期間中ということもあり、お世話になった教授や友人に会う暇もありません。昨年8月の渡米以来、7か月を過ごした寮の荷物をまとめ、翌日には成田行きの便に飛び乗りました。当時は体調の検査もなく、公共交通機関を使って都内の自宅に帰宅。外出自粛もありませんでした。私の経験を、同じ大学生や、日本の皆さんに知ってもらいたいと思い、キャンパス・スコープ(キャンスコ)に加入。こうして、記事を書いています。

 

「マスク足りないんだ」

 

 羽田空港でアルバイトをしているキャンスコメンバーの友人は、私のように海外から帰国する人、日本から海外へ帰る人、様々な人の行き来を、この2か月ほど、見てきました。「2月上旬は、まだまだ中国からの入国もあった。春節(2月12日=中国の旧正月)が終わってから帰国する人はマスクを買いだめしていたから、『マスク足りないんだ、へ~』って感じ」と振り返ります。

 

 3月に入り、世界各国で入国制限が始まると、空港の雰囲気も変わりました。日本人の海外旅行は軒並みキャンセルで、出国するのは外国人ばかり。でも、ヨーロッパに帰る人のほとんどはマスクをしていなかったそうです。「日本が危ないから自分の国に帰る、という印象だった」。一方、入国者は出張先帰りのビジネスマンや、海外居住の日本人の「駆け込み」帰国。フランスやイギリスからの帰国者は、検疫を通るだけで何時間も待たなければならず、その列は何重にもなっていたといいます。「並んでる時にクラスター発生するんじゃないの?って思う」と指摘します。検疫で発熱などの症状があると、更に何時間も検査を待たなければならないため、疲労感も増すばかり。さらに、検疫をパスしても、「2週間の自宅待機」と「公共交通機関を使用しない」ことを求められます。「全員がレンタカーで帰ることが出来るはずもないし、迎えに来る人がいる訳でもない。かなりの人が公共交通機関を利用していると思う」と話します。

 

 普段の昼間なら、12時から15時までは一気に800人以上の人が入国していたそうですが、今はたった1便で、乗客は100人もいない。「オリンピックのために整備された、新しく綺麗な玄関口のはずなのに、虚しいよね」と締めくくりました。

 

日米の意識に違い

 

 私はもうすぐ、米国を離れてから1か月になりますが、日本との対策の違いを感じています。米国では、州や大学が先行して独自に対応する一方、日本では、外出自粛要請が出されてから、休校や在宅勤務が決定される事例が多いように感じます。また市民の反応違いも興味深いと思います。米国では「健康」を意識する人が多いのか、スーパーでは肉が品切れの一方、スナック菓子の棚はいっぱい。客同士の距離を保つため、スーパーでの入店制限も行われています。また、日本では、「自分の身を守る」ために使われる印象が強いマスクですが、米国では「他者への感染を防ぐため」の着用が勧められているそうです。マスクで予防するよりは、普段から免疫力を高めて対処する、という意識が強かったように感じました。どちらが正しい、とは言えないと思いますが、日本でも緊急事態宣言が出される中、米国のように感染が広がらないことを願うばかりです。

 

 予想外の出来事で切り上げられた留学でしたが、友人や家族のサポートで無事に帰国できました。これからも、留学で学んだこと、感じたことを、キャンスコの仲間と一緒に発信していきたいと思っています。

(早稲田大学・佐野華恵


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(2020年4月10日 12:25)
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