関東大震災から100年がたちました。いつ起こるか分からない災害に備え、地域を守るために活動する消防団。大学に通いながら、活動に関わる同世代がいると聞き、取材しました。(早稲田大学・高田彩乃)
アルバイト・ゼミと両立 訓練に汗
「イチニ、イチニ」。7月中旬、蒸し蒸しとした天気の中、長袖長ズボン、長靴にヘルメット姿の100人ほどが、墨田区の消防団訓練場で訓練に汗を流します。この日の訓練は、災害でけが人を運ぶことを想定した作業。2人一組で約30キロ・グラムの人形を運びます。男性たちに交じって声を出すのは、日本大学3年の消防団員・田中千紗都さん。がれきの木材を切断するチェーンソーやジャッキの扱い方などの1時間半ほどかかります。訓練を終えた田中さんは、「消防団員は家族のような存在。同じ目標に向かって頑張っています」と汗をぬぐいました。
田中さんが消防団の活動に興味を持ったのは高校生の時。授業で見た首都直下型地震のシミュレーション動画では、大きな被害が想定され、行政も機能しない様子が描かれていました。「災害の時は、自分で動けた方がいいかも」と、思うようになりました。
日本大学に入学して2か月ほどが過ぎた1年生の6月。隣に住む祖母から何気なく渡されたのが消防団のチラシでした。「郵便BOXにこんなのが入ってたんだけど、ちーちゃん、どう?」。見慣れた風景が、がれきの山に変わるシミュレーション動画がまざまざと蘇ります。「いざという時に、大切な人のためになりたい」と入団を決めました。
消防団の活動は月2回。訓練のほか、緊急時の連絡機器の確認などを行います。大学の授業を終えて自宅に帰ると「活動服」に着替えて2時間ほどの訓練です。地域で働きながら参加している人も多く、田中さんもゼミやアルバイトと無理なく両立できているそうです。
地域の防災活動のリーダーである消防団員は、災害時には真っ先に活動しなければなりません。田中さんも、普段から講習を受け、応急処置などの知識も身につけています。2022年3月に発生した福島県沖地震の時には、地元の押上地区の一部が停電。午前0時頃に集まり、ポンプ車に乗り込んで安全確認も行いました。将来は警察官を目指しているという田中さん。「困っている人の力になりたい」と表情を引き締めます。災害はいつ起きるか分かりません。そんな時のために、地域の中心となって活動する覚悟を持って日々活動する同世代の姿に、刺激を受けました。
消防団のメンバーは、各市区町村で随時募集しています。詳しくはこちらのサイトで。