13.「当たり前」の光景
慶應義塾大学2年 種村竜馬
私は、障害者を支援するNPO法人の活動に参加している。
昨年の夏休み、ヨーロッパを旅行したとき、障害者が日常生活に溶け込む姿を見たのがきっかけだった。
ハンガリーの首都、ブダペストのレストランでは、片方の腕が不自由な男性が、健常者と一緒にウェーターの仕事をしていた。公園で知的障害者がヘルパーと笑顔でくつろぐ姿も見た。
それまで、私は障害者と接したことがほとんどなく、レストランの店員に「これが当たり前の光景だ」と言われ、驚いた。
帰国後、NPO法人の活動を始めてから、障害者福祉に関する文献を読み、日本の設備の不十分さやヘルパー不足などの実態を知った。NPOでは、障害者の自立施設をPRする企画や介護の手伝いをしている。
昨年末には、知的障害者の男性の外出支援を、NPOのホームページで紹介する記事を書いた。男性は、ヘルパーの援助を受けながら、古着を集めてリサイクル施設に持っていく作業をしたり、スーパーで夕食の買い物をしたりした。私は、その様子を一日かけて取材した。
障害者や支援者らと交流するクリスマス会の準備をしたり、ヘルパー不足を少しでも解消するため、求人チラシのデザインを自ら買って出たりもしている。
活動を通じ、障害者の友人がたくさんできた。みんな個性的で、明るく、一緒にいてとても楽しい。
障害者について考えたことがなかった私が、今は「当たり前」の光景を実現することに尽力している。
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