MyScope 14.伝える心


14.伝える心


淑徳大学2年 三瓶瑞菜(みずな)

 

 私は、文学作品などが持つ「伝える力」を大学で研究している。「表現学」と呼ばれ、最近は、ベストセラー「君たちはどう生きるか」について、小説と漫画版の違いを比較した。
 主人公のコペル君と叔父は、小説では「師弟関係」だった。しかし、漫画版では相棒のような関係に変わっている。今の若者に共感されるように内容が編集されているのだ。
 表現学の授業では、ラグビーの女子選手の活躍ぶりを取材して記事にする演習も行った。だが、原稿を書こうとしても、どういう言葉を使って、どのような構造にすればいいのかがわからない。文章を書いては消すことを繰り返して自信を失っていた。
 そんなとき、大学の文化祭で見たのが「手話歌」のパフォーマンスだ。知的障害者らが音楽に合わせ、手話を繰り出しながら踊る。本番に向け一生懸命に練習してきたのだろう。舞台で表現することを純粋に楽しんでもいる。出演者たちの姿勢がまっすぐに伝わってきて、私は涙ぐむほど心を動かされた。
 私は文章のテクニックばかり気にして、自分の気持ちを素直に相手に伝えることを忘れていた。つたない文章でも、相手の心に深く響かせることができるのだ。
 「心」で伝え、「心」に伝える。それがわかってからは、スラスラと筆が乗っていった。しっくりくる言葉を見つけられるようになった。人の心を動かす表現者として、一歩を踏み出せたと思う。



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(2020年3月12日 10:00)
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