[80]自発的な部活動 学校の部活動改革が、様々な形で進められている。6月6日付の読売新聞都民版では、「『シブヤ流』校外部活 躍動 ──ストリートスポーツ/アニメ・声優」と、渋谷区での新たな取り組みの記事が載っていた。区在住の小学校高学年~高校生が参加でき、学校外でアスリートらが指導する形をとるという。いかにも渋谷らしい、地域色の濃いクラブの誕生だと感じさせる。 アニメ・声優クラブのほうは、子どもたちの要望から生まれたとも書いてあった。50年ほど前の思い出が、脳裏によみがえってくる。
私の入学した中学校には、剣道部がなかった。ショックだった。小学校5年生で始めた剣道がなんとなく楽しくなってきて、中学では剣道部に入ろうと心に決めていたからだ。部活動をしない生徒が当時は皆無で、まだ「帰宅部」という言い方さえなかったと記憶している。かといって、剣道以外の部活に入る自分の姿も全然イメージできなかった。 もんもんとしていると、周りの友だち数人から「自分も剣道をやりたい」という声が聞こえてきた。みんなで職員室に乗り込み、剣道部の創設を求めた。「顧問の先生がいないとねぇ......」という学校側の反応に、顧問をしてくれる大人を学校中で探し回った。事務室の職員に剣道経験者が見つかって、わが剣道部は誕生した。次の年には部員も増え、長く続いた。
教育課程外で行われる部活動は、生徒の自主的、自発的な参加により行われる──。学習指導要領には、そんなことが書いてある。だが、従来の学校の部活において、「自発的な」例は少なく、学校側が指導できる教諭の有無で用意した部活のなかから生徒たちが選ぶケースがほとんどであり続けてきた。 そうした状況がいま、変わりつつある。個人的には「生徒が求める部」の創設が、部活動改革の中心になったらいいなと思っている。自分たちで始めた部活には責任も伴うから、活気のある部が生まれるのではないか。
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田中孝宏 読売新聞教育ネットワーク・アドバイザー
1960年千葉県船橋市生まれ。元小学校長。「ブラタモリ」にならって「ぶらタナカ」を続けている。職場の仲間や友人を誘って東京近郊の歴史ある地域を歩く。「人々はなぜ、この場所に住むようになったのだろう」と考えると、興味は尽きない。