34.誰かのために
東洋大学2年 浜野智世
「いつか、誰かのために、社会のために動こうと思うときがくるよ」
朝学習が始まっている教室に入れず、廊下に正座していた私に、担任の先生がそう言った。高校1年の冬、私があまり登校できなくなっていたときのことだ。
友達がいなかったわけでもなく、いじめられていたわけでもない。けれども、学校に足が向かなかった。
皆が普通に登校する中、自分だけが、学校に行けていない。なぜ同じことができないのかと思っていた。
学校に行けない私に、「社会」とか「誰かのために」という言葉を先生が使う理由が、よくわからなかったが、「ここでくすぶっている場合じゃないぞ。もっと周りを見ろ」と励ましているようにも聞こえた。
そこから、少しずつではあるが、私は学校に通うようになった。その後も他の先生やクラスメートらに励まされ、私は高校を卒業し、大学に進学できた。
今、私は大学のオンライン授業を受けながら、学童保育のアルバイトを続けている。コロナ禍で人手が足りず、「誰かの役に立てれば」と始めた。
保護者や職員からは感謝されるが、私が大変だったとき、助けてくれた人たちのように、「自分のできること」を少しでも行動に移せたらと思う。
誰かのために役立つこと、少しずつでも自分にできることを探し、行動に移していきたいと思う。そして、いつか、不意に声をかけてくれた先生のように、他人にそっと寄り添える人間になりたい。
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