35.赤点の世界史
法政大学2年 瓜生毬乃(まりの)
高校時代、世界史のテストで赤点(落第点)をとったことがある。
カタカナの人名や地名を覚えるのが苦手で、志望大学の受験科目にないとの理由もあって、世界史の勉強をしなかったからだ。
授業で先生の講義を聞かず、テストに臨んだら100点満点で24点。「やっぱりか」と反省すらしなかった。
高校を卒業したら「世界史に会うことは二度とない」と思い、教科書は本棚の奥深くに押し込まれた。
今年の春休み、絵画鑑賞が趣味の私は、西洋美術史の勉強を始めた。作品を鑑賞して「美しい」と感じるだけではもったいない。歴史的背景を踏まえ、美術品に触れたいと思った。
さっそく、専門書を数冊購入し、読んでみた。『真珠の耳飾りの少女』などで知られるフェルメールの作風は、宗教改革によって確立されたという。
宗教改革は知っている。だが、宗教改革がどんな流れで起き、どれほどの影響力を持ったものかがわからない。また、「印象派」の絵画も好きだが、それに影響を与えたとされる「産業革命」について、私は詳しく知らない。
美術史の本の文面で浅い理解はできるが、自分の奥深くまで落とし込める理解につながらないのだ。知識は点ではなく、線、平面、立体でつながっているのだと痛感した。
世界史を避けてきた自分を恨んだ。私は本棚から世界史の教科書を取り出した。勉強する時間だけは無限にある。新品のようにきれいな教科書とともに学び直しをスタートさせた。
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