36.自分に勝つ
流通経済大学3年 石塚一成(イラストも)
私は中学生の時、剣道部に所属していた。
2年生に上がる頃には副将を任された。稽古では、相手の竹刀を最後に払う攻め方ばかりし、自分が強くなった気分になっていた。だが、地区大会では3回戦止まりがほとんどだった。
その頃、総合格闘技の試合を動画配信サイトで見た。総合格闘技は、グラブ着用や階級制、ラウンド制など、プロレスに比べ競技性が高い。私が見た試合は、対戦した2人の選手が壮絶な打ち合いをし、引き分けに終わった。観客の拍手喝采が鳴りやまず、両選手は健闘をたたえ合っていた。
勝ち負けにこだわる自分が小さく見えるほど、感動した。翌日から、剣道で市内大会2連覇の実績がある先輩に、毎日のように稽古を申し出た。何度打たれても、負けを覚悟で臨んだ。実際、8回負けたが、最後は互角に渡り合えるようになった。
その後の地区大会では、県大会常連校にも勝利し、ベスト16まで勝ち残った。
何事も相手に勝つことではなく、自分に勝つことが大切だということを私は学んだ。
今、大学で履修する考古学が私は苦手だ。石器や埴輪の特徴を見て年代などを特定する方法を学んでいるが、似たものが多く間違えやすい。
そこで、地元の指定文化財のホームページで、出土品の埴輪や石器を毎日眺め、見分け方を身に付けた。よろいをまとった埴輪をじっと見ているうちに、剣道に励んだ中学生の自分を思い出した。
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