37.不思議な縁
昭和女子大学3年 樽谷三奈
私は中学生のとき、英語の先生にあこがれ、将来は、大学で英文学を学び、卒業後は英語教員になろうと思っていた。
だが、高校時代、古典文学の面白さを教えてくれた先生の影響で、志望が変わった。大学は国文科に進学し、古典文学を専攻している。
その古典の先生は、授業で『源氏物語』の「若紫」を取り上げたとき、「主人公の光源氏は、眉毛がボサボサな女の子に夢中になる」と解説し、真面目で面白くない古典のイメージを消してくれた。
私は古典作品に親しむようになった。鎌倉時代の説話集『古今著聞集』では、知人にからかわれた女流歌人が、歌を詠んで言い返す対応にスカッとしたこともある。
大学では、平安から鎌倉時代の作品を中心に学び、『建礼門院右京大夫集』も好きになった。日記的要素の強い歌集で、宮中の生活や女房目線からの平家男子についての記述が面白い。
また、私の学科では、百人一首を英訳し、海外に伝えるプロジェクトも進行中だ。これまで英訳された百人一首の作品から、本来のニュアンスに近い歌をランキング化したり、百人一首に選ばれていない和歌をオリジナルの「百人一首」として冊子化したりする。
今は、新型コロナウイルスの影響で中断しているが、自国の文化を英語で伝えることにやりがいがある。
一度は、英語の教員を目指した自分が、ここで英語にかかわることになるとは、想像もしていなかった。不思議な縁を感じている。
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