ウクライナを思い、学びをやめない~ゼレンスキー大統領オンライン講演@東洋大学

「ウクライナは平和のために戦っている」と訴えたゼレンスキー大統領

 

 「みなさんの知識が、ウクライナの復興に必ず役に立ちます」。ウクライナのゼレンスキー大統領によるオンライン講演が7月4日、私の通う東洋大学で行われた。幼い子どもも含め、多くの人が犠牲になる悲惨なニュースが伝えられる毎日。何かをしたくてもできないもどかしさを感じている私たちに、何ができるのか。大統領のメッセージを聞いて考えた。(東洋大学・福島彩加、写真も)

 

「映画みたい」でもそれが現実

 

「日本の若者は戦争を本や映画やゲームから知ると思います」

 

 ゼレンスキー大統領の言葉が胸に刺さった。ロシアによるウクライナへの侵攻が始まり、毎日のようにメディアを通じて映し出される風景。子どもたちが避難しているのに攻撃され、破壊された劇場や学校、テレビ越しに伝わる弾道ミサイルの衝撃波、モザイクをかけられた遺体。「映画みたい」と思わず口にしてしまったことを思い出し、自分を恥じた。

 

「ミサイルや爆弾のない平和な空、破壊されていない家、死んでいない、殺されていない、負傷していない家族と周りの人たちが、大きな恵みです」

 

 今、同じ地球上で行われている戦争。メディアを通じてとはいえ、目にした確かな現実を、「映画みたい」と思ってしまうこと自体が、私たちが幸せな環境にいることの証なのだ、と気づかされた。戦争を実際に経験し、悲劇が同じ国土の上で起こっていたとしたら、家族や親せき、友人や知人が犠牲になっていたとしたら、とても「映画みたい」とは言えないだろう。私たちは日々「大きな恵み」の中に生きているのだ。


 私たちの通う東洋大は、ウクライナの3大学と協定を結び、留学生や研究者を受け入れてきた。講演は、そうした縁もあって、在日ウクライナ大使館からの提案で実現したそうだ。会場には350人を超える東洋大学の学生に交じって、そんなウクライナの学生たちの姿もあった。

 

平和のために学びを止めない

 

 「暗い表情をしていたり、学校を休んでしまう学生もいる」。そんな留学生たちをサポートしている、文学研究科の学生が話してくれた。留学生たちの姿を見ると、「簡単に言葉をかけられない時もある」と言う。


 「全てのウクライナ人と同様に、どうしたら母国を救えるか日々考えている。日本語を学習するウクライナ人としてどのような貢献ができるのか」というウクライナ人留学生の質問に、大統領は、「みなさんは日本にいながらウクライナの空間を防衛している。みなさんが持ってきてくれる知識はとても重要。復興に必ず役立つ。日本で得られた知識を持って復興に参加してほしい」と答えた。つらい状況でも、前を向いて歩むしかない。日本という国で学び続けることが、いつかウクライナが復興する時の財産となるから――。

 

 「私たちにできるのは、学生たちの学びを支え続けること」。講演後に、矢口悦子学長の話を聞くことができた。講演は国内の14大学にもオンライン中継された。大統領が言うように、「学ぶ」ことはいつかウクライナの、そして世界のためになると信じ続けるしかない。若者が「学ぶ」ことには無限の価値がある。だからこそ、困難の中でも学びをやめてはならないのだ、と強く思った。

 

 

「ウクライナは平和のために戦っている。皆さん、平和を守ってほしい」

 

 ゼレンスキー大統領のメッセージは、オンラインの画面越しに私たち日本の大学生の心を強く揺さぶった。


 「ぼーっとしているだけではダメ。己を高めるための勉強が必要」。大統領に「堂々と行動する力の源泉を教えてほしい」という質問をぶつけた国際学部の男子学生は興奮気味に話してくれた。私たち大学生ができるのは、決して学びを止めないこと、そして、平和のために自分ができることを考え続けること。その答えは、学びの先に生まれる行動で、私たち自身が出すしかないのだ

 

 

 キャンスコ46号を読んで、感想を教えてください。抽選でAmazonギフト券が当たるチャンス。Webも読めばさらにチャンスが広がります。キャンスコ46号が手元になくても、Webコンテンツを読めば、アンケートに応募できます。

⇩回答はこちらから⇩  

 

 

(2022年7月 7日 07:33)
TOP