「大学生が、デザートで真剣勝負!」。東京の4校の大学・専門学校が、自分たちで考えたデザートの売り上げを競うコンテストが、2021年11月24日から12月4日の2週間、都内のホテルの協力で行われました。オンライン、対面のまだら模様の授業が続く中、レシピやデザイン、販売戦略などをトータルで考えた学生たち。果たして、一番売れたのはどんなデザートだったのでしょうか?(東洋大学・樋口佳純)
レシピづくりも一苦労
コンテストでは、ゼミ単位で参加した4校が考えたレシピを、会場となるホテル「グランドヒル市ヶ谷」(新宿区)のパティシエの協力を得て商品化。ホテル内のティーラウンジで売り上げを競いました。コロナ禍で失われがちな「学びの主体性」を取り返してもらおう、という試みです。
「隠し味は、メンバーの『絆』です」。東洋大学の原田理子さん(国際観光学部国際観光学科 吉岡ゼミ2年)のゼミでは、15人のメンバーが協力して、「鳴門金時のタルトモンブラン」でコンテストに挑戦しました。秋に収穫されたばかりのサツマイモ「鳴門金時」をふんだんに使ったタルトモンブラン。コンペティションが行われた11月から12月にかけては、まさに旬の味です。芋けんぴやピスタチオの食感、オレンジの酸味は驚きの連続。食べていて、楽しさが溢れる一品でした。
デザート・コンペティションに参加した東洋大学吉岡ゼミのメンバー |
活動は、オンライン授業が続く2021年の9月、お互いの名前しかわからない状況でスタートしました。メンバーは「製品開発」「プロモーション」「原価計算と現地調査」の3チームに分かれ、手探りの議論を続けました。
製品開発チームは、SNSのアンケートをもとにアイデアを練り、会場の客層や立地、既存のケーキの種類なども徹底調査。その情報をもとに、ホテルのパティシエとも意見交換しながら、自分たちのこだわりがたくさん詰まったケーキを完成させました。入学以来ほとんど対面のコミュニケーションを経験していない2年生。原田さんは、「意見をぶつけ合い、衝突しながらの作業に不安を感じることも多かった」と振り返ります。
レシピが決まっても、今度は原価がオーバー。さらに、どうすればショーケースの数あるケーキの中から選んでもらえるかなど、試行錯誤が続きました。SNSで会場へのアクセスなどのプロモーション動画を拡散させるなど、PRにも努めました。原田さんは「活動を通じて生まれた絆を今後も活かしていきたい」と話しています。
「今まで大学で習得してきたことを、実践することができました」と話すのは、立教大学の田中美優さん(観光学部観光学科2年)です。田中さんたちは、ゼミ内コンペで選ばれた「ルレ・オ・ポティロン」で挑戦しました。試作を担当した田中さんは、「ただ考えるだけではなく、失敗を重ねることで気持ちが高まっていった」と話します。作品は、地産地消にこだわり、新宿区で生まれた内藤カボチャが特徴のラム酒が香る上品な味わいのロールケーキ。鏡勇人さん(観光学部観光学科2年)も、「コロナに奪われた学びの主体性を取り戻せた」と手ごたえを感じています。
立教大学の学生たちはゼミ内コンペも重ねた |
コロナ禍こそ実践を
コンペティションは、ホテルを中心としたホスピタリティ業界のプロフェッショナルを育成するビジネススクール「宿屋大学」と「ホテルグランドヒル市ヶ谷」の共同企画です。両校のほかにも、「栗のムースケーキ」の専修大学、「台湾カステラ マロンクリーム添え」の東京YMCA国際ホテル専門学校の計4校が挑戦。14日間の全日で完売し、計140個を売り上げた東洋大学の「鳴門金時のタルトモンブラン」が、見事優勝を果たしました。
4校がアイデアを競ったコンペティション |
「机上の学びだけでなく、いろいろな事に触れてもらいたかった」。会場のホテル「グランドヒル市ヶ谷」営業課の安田さゆりさんは、企画の狙いを説明します。目標は「一番売れるケーキ」を考えることでしたが、「振り返りが大切」と力を込めます。なぜ売れたのか、売れなかったのか、見つめ直すことが、学びを深めてくれるのです。各校の作品は、若者ならではの見た目や味のこだわりなど、プロもうならせるものでした。また、各校のケーキを食べに若い世代が多く足を運んでくれたことで、安田さんも刺激を受けたそうです。コロナ禍で苦境にあるホテル業界。「これからの企画に活かしていきたい」と話しています。
入学以来、オンライン授業を過ごすことがほとんどだった私たち2年生。3年生となる今年は就職活動も本格化します。厳しい状況の中でも創意工夫をこらした同世代を参考に、大学生活を充実させていきたいと思います。