「近くて遠い国」との懸け橋に 日露学生会議【キャンスコリポート】

赤の広場(モスクワ)。歴史的背景を街並みからも感じることができた=写真はいずれも日露学生会議提供

 

 あなたの大学にも、頑張っているサークル、ありますよね?ほかのサークルの大学生たちは、どんなことを考えながら活動しているのか、キャンスコを通じて、もっと多くの大学生に知ってもらうお手伝いがしたい!ちょっとお節介かもしれませんが、頑張っているサークルに声をかけて、キャンスコメンバーが紹介させてもらいます!

 

1. 「近くて遠い国」との懸け橋に 日露学生会議

リポート:日本女子大学3年・中村樹嶺=じゅね

 日本地図を逆さに見たことってありますか?日本海の反対側には、韓国・中国のほかに、大きな国の姿が浮かび上がってきます。アメリカや、ヨーロッパよりもずっと近いのに、実は知らないことばかりの国・ロシア。そんな「近くて遠い国」と、日本をつなぐ活動をしているのが、「日露学生会議」です。

 

 日露学生会議は、上智大学と慶應義塾大学の学生が、旧ソ連との相互理解を深めるために結成。今年で32年目です。「日露の懸け橋たらん」というスローガンのもと、年に一度、どちらかの国の学生が相手の国に訪れ、両国の社会問題についてディスカッションを行っています。ディスカッションの相手は、多くの外交官を輩出しているモスクワ国際関係大学とモスクワ大学の学生たち。未来の外交官たちとの交流は貴重な体験です。

 

4か月かけて準備

 「事前学習をしっかり行うのが特徴です」。実行委員の大西由紗さん(日本女子大学3年)が話してくれました。両国の関係だけでなく、それぞれの国が抱える社会問題についても話し合います。ディスカッションの4か月前から毎週勉強会を開き、計16回をかけて学びます。個別のテーマについては、さらに「分科会」を設定し、学びを深めているそうです。今年度は国際関係分科会・政治経済分科会・カルチャー分科会があります。「大学の専攻でない分野の論文を週に6本読んだ」ということもあったそうです。クリミア問題やシリア問題などのロシアが抱える課題だけでなく、日本の天皇制や憲法改正など自分たちを見つめなおす機会にもなりました。

 

 ディスカッションは、どちらかが有利にならないように、国際公用語の英語で行われます。「日本語なまりの英語」と「ロシア語なまりの英語」がぶつかり合い、聞き取りづらい時もありますが、「ロシア語のできる日本の学生や、日本語のできるロシアの学生に助けてもらう」と言います。試行錯誤を重ねながら、言葉の壁を乗り越えているのです。

昨年のディスカッションはロシア開催。「全ロシア博覧センター」で、旧ソ連時代について理解を深めた

異文化を見て気付く自国の多様性

 また、「日本では、○○という意見が多数派なのか」とロシアの学生に質問されたとき、サークル内で意見が割れてしまったたこともあったとか。「『異文化理解』『異文化交流』とはよく言いますが、同じ国でも一人一人が違った視点で物事を見ている。『異なる意見も一旦受け止める』という姿勢を学びました」と大西さんは話します。文化の壁・言葉の壁を乗り越える中で、自然と「人との関わり方」を身に着けていく学生たち。時には「痛み」も伴う議論を重ねながら、多くのことを学んでいきます。

 

 北方領土の問題など、両国の間にはまだまだ未解決の問題があります。「学生としてできることは少ないけれど、個人のレベルで、少しでも関係を良くしていきたい」と大西さん。 新型コロナウイルスの影響下、オリンピック委員会の五輪延期を受け、今年のディスカッションも開催できるかどうかは検討中です。両国ともつらい状況ですが、昨年知り合ったロシアの学生と未だに連絡を取り合い、互いの国の状況について情報交換を行っているそうです。近くて遠い国との距離を少しでも近づけようと奮闘している大学生に刺激を受け、私達も、よりよい日本の未来を作っていければ、と思います。

 

>>日露学生会議ウェブサイト

ロシアと言えばエルミタージュ美術館(サンクトペテルブルク)と③赤の広場(モスクワ)。歴史的背景を街並みからも感じることができた
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(2020年4月22日 14:55)
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