第3回神保町シンポ、本の街の可能性は「看板建築残る街並み」「多様な店そろう魅力」にあり

神保町にある出版社や書店経営者らが意見を出し合った座談会

 本の街として知られる東京・神保町の可能性を考えるシンポジウム「神保町と本の文化の未来」(東京文化資源会議主催、神保町文化発信会議共催)が10月23日、千代田区の出版クラブで開かれた。昨年6月から行われ、今回で3回目となる。

 

千代田区長が講演...カザルスホール再開に言及「神保町と親和性高い」

 基調講演では、同区の樋口高顕区長が神保町が持つ魅力や課題、将来像などについて語った。魅力としては、建物の前面を装飾した看板建築が残る特徴的な街並みに、書店の他に飲食店など多様な店舗が集まっていることを挙げた。一方で、老朽化した建物の建て替えが課題になっていると指摘し、「行政として神保町らしい用途を評価するなどの街づくりルールを作ることを考えている」と方向性を示した。

 

 また、同区内にある音楽ホール「日本大学カザルスホール」についても言及。ホールは長らく閉館しているが、同区が日大から借り受けることで再開する協議を進めており、「費用はかかるが、国際的な認知度や、神保町との親和性も高い」と活用に前向きな姿勢を表明した。

 

経営者らの座談会...世界の作家が滞在し制作する仕組みを、キャッシュレス手数料優遇は韓国で実現

 シンポジウムでは、神保町にある出版社や書店の経営者らによる座談会も行われた。

 

 有斐閣の江草貞治社長は、海外からの観光客が増えるなど、神保町が変化し、どんどん開かれた街になっているとし、「若い世代がやりたいことを受け止められる、新しい組織がこれから必要になってくるのではないか」と述べた。

 

 昨年、ノーベル文学賞を受賞した韓国の作家、ハン・ガンさんの邦訳出版で知られるクオン社の金承福社長は、同社が経営する書店で韓国の作家や翻訳家、編集者らによるイベントを多く開いていることを紹介。「世界中のクリエイターに神保町に滞在してもらい、作品を書いてもらう仕組みがあればいいのではないか」と、アーティスト・イン・レジデンス(滞在制作)のアイデアを提案した。

 

 書店の経営課題の一つであるキャッシュレス決済についても話題が及んだ。神保町で複数のシェア型書店を経営する由井緑郎さんは「決済手数料の負担は重いが、両替の手間などがなくなる利点もある」と指摘。金社長は韓国では書店などが協力して国などに働きかけ、小規模事業者への手数料を下げた事例を話し、「隣の国でやっているのだから、難しいことではない。皆さんでやりませんか」と来場した書店主らに呼びかけた。(文化部 北村真)

(2025年11月17日 19:00)
TOP