神前拓望さんが全国高校ビブリオバトル決勝大会へ...読売中高生新聞大会、オンラインで初開催
オンライン大会中の表示画面
全国の高校生が自分の「推(お)し本」の魅力を全力でアピールする書評合戦「全国高校ビブリオバトル」の読売中高生新聞大会が12月23日、オンラインで開かれました。各地から結集した35人による白熱のバトルの末、大阪府の関西創価高校1年、神前拓望(こうさき・たくみ)さん(16)が優勝しました。神前さんと、準優勝した群馬県立前橋商業高校3年、浜島夏美さん(18)のスピーチの模様をお届けします。
優勝 大阪・関西創価高校 神前拓望さん
「吉祥寺の朝日奈くん」中田永一 祥伝社 1760円
オンライン開催の中高生新聞大会を制した神前さん
短編への愛 一気に語る
「正直、この本は何も知らないで読んだ方が面白い。読みたいと思った瞬間に音量をゼロにしたり、(パソコンなどから)イヤホンを引っこ抜いたりした方がよろしいかと」。オンライン大会であることも意識したこんな語り出しで、聴衆の心を引き込んだ。
神前さんが選んだ一冊には、恋愛短編5本が収録されている。この日は厳選した2本の魅力を語った。
1本目は「交換日記はじめました!」。交換日記の文面だけで物語が進むという異色の作品だ。「付き合ったばかりの恋人の交換日記をのぞき見ることができる。それが誰かの人生を前に進ませてくれる」と「推しポイント」をアピールした。
もう1本は、頻繁におなかが鳴ってしまう、自称「ハラナリスト」の女子高生をコミカルに描く「うるさいおなか」だ。「毎朝土下座のポーズをすることで胃腸の調子を整えるとともに、おなかの神に祈りを捧(ささ)げる。そんな彼女があこがれの先輩に、ついに告白。さあ、腹は鳴るのか鳴らないのか」と、まるで実況中継をするアナウンサーのように、一気に語り上げた。
友人と「作戦会議」
神前さんは小学生の頃から本が好きで、中学に入るとビブリオバトルに夢中になったという。今回も「ビブリオ仲間」の友人と「作戦会議」をしながら、原稿を練り上げたという。
見事、全国の猛者(もさ)たちが集う決勝大会への切符を手にした神前さん。「多くの人にオススメ本を手に取ってもらえるように頑張りたい」と意気込んでいた。
準優勝 群馬・前橋商業高校 浜島夏美さん
「空白小説」氏田雄介、小狐裕介、水谷健吾 ワニブックス 1265円
オンライン大会で準優勝した浜島さん
「実験小説」で想像力刺激
真っ白な表紙に小さく書かれた「吾輩(わがはい)は猫である」「名前はまだない」の文字。その右側には四角形とともに大きく「空白小説」。「いったい、どんな本なのだろう?」とワクワクさせられる表紙を画面いっぱいに映し出し、「どういうテーマ、ジャンルの本なのかよくわからないですよね」と問いかけるところから、スピーチを始めた。
浜島さんは、本作があらかじめ決められた書き出しと結びの文の間の「空白」をどう埋めるかで、物語の展開が変わる「ショートショート(超短編)」集であることを説明。「小説がルールや先入観をいかにそぎ落として自由にできるのかを示した『実験小説』」と評し、「断言します。この本のイメージは、必ず裏切られる」と強調した。
ビブリオバトルには高校1年から取り組み、今回がその集大成のつもりで臨んだ。本の魅力は「想像力をかき立てられるところ」だといい、高校生活最後となる大会には、こうした魅力を存分に感じられる作品を選んだという。浜島さんは「優勝できなかった悔しさはあるけれど、全国の参加者の前で発表できたのは楽しかった」と笑顔で話した。
5分で紹介
今回の読売中高生新聞大会は、全国高校ビブリオバトルが10周年を迎えることを記念して、初めて開催された。紙面などで告知を行ったところ、定員を大幅に上回る50人以上から応募があり、抽選で出場者を絞り込んだ。
大会は、出場者を5~6人ずつ六つのグループに分けて予選を実施し、各グループの1位が決勝で戦うという形式で行われた。出場者は5分以内で自分が選んだ1冊の魅力を語り、その後2分間、ほかの出場者からの質問に答える。勝者を決める投票には、出場者のほか、担当教師や保護者(出場者1人につき1人まで)も参加した。
この大会で優勝した神前さんは、1月28日に東京国際大学の池袋キャンパスで行われる全国高校ビブリオバトルの決勝大会に出場する。(本の値段は税込み)