リンダ・ヒル博士インタビュー GCI「グローバル・フォーラム2019」に向けて

この記事は、教育ネットワーク参加団体「Global Citizens Initiative(GCI)」からのお知らせです

 

  8月2日に開催される「グローバル・フォーラム2019」に先立ち、このフォーラムのよき理解者であり、基調講演を行っていただくハーバード・ビジネススクールのリーダーシップ部門教授である、リンダ・ヒル博士にGCIが今年6月にインタビューを行った。その一部を紹介する。


 

 

――あなたにとって、GCIグローバル・フォーラムの意義は何でしょう?

 

DR.HILL 次世代の日本のリーダーを育成する方法についての議論に参加することを楽しみにしています。私たちは、グローバリゼーションと急速に進歩する技術によって大きく形作られたダイナミックで複雑な世界に住んでいます。今日や明日の課題を乗り越えるために必要な道徳に基づいた想像力と勇気を、若い人々にどのように準備してあげられるでしょうか。GCIの社長兼創設者の桑名由美さんからGCIの理事会に加わるよう依頼されたとき、光栄に思い、ぜひ参加したいと思いました。ローカルに根付き、かつグローバルな優れた市民となる個人を育成するというGCIのミッションを、私は全面的に支持しています。自分自身の文化に対する深い認識がなければ、若い人にはより広い世界に踏み出す用意ができているとは言えません。さらに、GCIは、全人格、つまり知っておくべきこと、行うべきこと、そしてどのような人間になるべきか、などの問題に対処するように設計されています。

 (今回日本で開催される)フォーラムは、教育、政府、そして民間の各分野を含む世代間対話としてふさわしい場です。多様な背景や経験を持つ人と革新的な問題解決に取り組む能力を改善すれば、私たち全員にとってより良い社会を築くことができると、桑名さん同様、私も信じています。

 

――フォーラムでは何を討論するのでしょうか?

 

DR.HILL 日本だけでなく、世界中で教育改革を検討するための様々な取り組みは、当然ですが、進行中です。ハーバード・ビジネススクールではこれまでも我々のカリキュラムや教授法について活発な議論をしてきたのは確かです。このように素晴らしい日本の聴衆の皆さんがこの議論を進めていくのは素晴らしいことです。今回われわれにはハークネス(Harkness®)メソッドのような、学生の「頭、心、手」に訴えかけるように設計された学習者主体の手法の専門家が加わります。どうやって前進していくかを考える行動計画(action plan)を立てられるよう、重要な課題や機会を形成し、追究できるような議論が進められるようお手伝いします。次世代の人々と進める討論会(roundtable)では、自分の価値観を声に出し、有意義な職業に進み、充実した人生を送ることに、どのくらいの準備ができているか、に焦点を当てます。掘り下げたい内容は以下の通りです。

 

・何を目指しているのか。

・その大志を実現するためにどれくらいの準備ができているのか。

・学んできたこと、そして学んだ方法など教育について、むしろこうであったらよかったのに、と思うことは何か。

 

 日本のグローバル企業のリーダーや学術専門家とのくつろいだセッション(fireside chat)では、経験や見解を尋ねたいと考えています。すなわち、以下のような質問です。

 

・人材育成に必要な企業文化、能力は何か。

・優れたリーダーとなるため、今日、何が求められているのか。激しく変化する世界経済の中で求められている最高の人材を育成し、適応して変化・革新していけるような組織――そのような世界水準の組織を形成するためにどのようなことを進めているのか。

・世界水準の組織として求められている人材とリーダーシップが、今の日本の組織にはあるのか。

・自分たちが受けてきた教育や今日偉大な指導者に求められていることを振り返って考えてみて、日本の教育は何を維持し、何をやめ、何を開始するべきなのか。

 

――グローバル・フォーラムに先立って新しい本を出版する予定はありますか?

 

DR.HILL 2冊の本のために研究しています。1冊目の本「Collective Genius 2.0」では、イノベーションに必要なエコシステム(ecosystem=生態系)を導き、構築するのに求められていることに焦点を当てています。リーダーたちは、自社のイノベーションを推進するために、イノベーションラボ、企業内アクセラレータ(加速させるための手段)を作り、ライバル社との提携さえ行っています。2つ目の本は、1冊目の本と密接に関連していますが、デジタル・トランスフォーメーション(Digital transformation<DX>=テクノロジーを利用して事業の業績や対象範囲を根底から変化させる、という概念)に関するものです。DXが単に新技術を使いこなす以上の大きな意味を持っていることに、大手企業は気づきつつあります。それには、企業文化の変化と新しい組織の能力を取り入れることが要求されます。新しい技術を利用して価値を創造するには、これまでとは全く違う働きができる労働力が求められているのです。

 

――(フォーラム参加者に向けて)ほかにメッセージは?

 

DR.HILL 日本への訪問を楽しみにしています。この国の豊かな伝統と美意識が大好きです。幸いなことに、日本の顧客がいるおかげで少なくとも年に1回は訪日の機会があります。数年前には、安倍首相の招きで(訪日し)、イノベーションとインクルージョン(inclusion=統合教育)について説明させていただきました。思考の多様性なくしてイノベーションはあり得ないということです。その際、別の会議出席者とは、日本の指導的地位にある女性の数を増やす方法について、会ってお話しできて光栄でした。日本にいると私の頭と心が本当に豊かになります。桜の咲く時期に家族を日本に伴いましたが、(家族はみな帰りたがらず)帰りの飛行機に搭乗させるのが大変でした。

 

リンダ・ヒル博士

ハーバード・ビジネススクールの教授リンダ・ヒル博士は、リーダーシップ研究に関する第一人者。「Collective Genius: The Art and Practice of Leading Innovation」(邦訳『ハーバード流 逆転のリーダーシップ』)、 Business Insiderによる「トップ20のビジネス本」にランクイン。また、TEDTalkでの人気に次ぎ、2013年にThinkers 50 Leadership and Innovation賞の最優秀賞にも選ばれ、Young President's Organization (YPO)や世界経済フォーラム(ダボス会議)で講演。世界的なリーダーシップとイノベーションの先導的なリーダーとして日本の大手企業も含む世界中の企業のためにコンサルタントとして活躍している。Relay Therapeutics(コンピュータの能力と「タンパク質の挙動」に関連する最新の実験的なテクノロジーを組み合わせて画期的な新薬発見エンジンを生み出すバイオテクノロジースタートアップ)や、ハーバード・ビジネス・パブリッシング、グローバル・シチズンズ・イニシアティブ(GCI)のボードメンバーやEight Inc.、Aspen Institute Business and Society Program、American Repertory Theaterのアドバイザリー・ボードなど、数多くの慈善団体、公共及び民間企業の理事会のメンバーとして活動。

 

(2019年7月29日 12:20)
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