読売新聞教育ネットワークの田中孝宏アドバイザーが、教員の皆さんにお薦めする本を、中央公論新社のラインナップから紹介します!
100歳の100の知恵
吉沢 久子 著
101歳で大往生した吉沢久子さんの古くて新しい暮らしの知恵100。心があたたかくなる暮らしのヒントが詰まっています。前向きな人生になるエッセイ集。
●初版刊行日:2021/8/20 ●文庫判/240ページ ●定価:792円(10%税込)
ふと、力を抜いて
「日々の季節の習慣は、生活の知恵や工夫がしみ込んでいるし、なんとなく楽しい気分にしてくれます。」
この本に登場する言葉の一つだ。生活科の授業で春夏秋冬の自然や行事などを学ぶ内容がある。伝統的生活習慣などが失われつつある今、無理なく季節を楽しむ100歳の知恵は、まさに生活科の実践をしているようだ。
長い人生経験の中から紡ぎだされる言葉は、強く心を打つ。
日々の生活の中にある気づきと学びの大切さを教えてくれる。それだけではない。変化をおもしろがり、未知の世界を楽しむ姿勢には若人のようなみずみずしさを感じた。あこがれる。
教員時代、子どもには「あこがれる人を持ちましょう」とアドバイスした。目標を具体化するためにわかりやすい例えだ。近くに、あるいは現実にそういう人がいれば申し分ないが、なかなかそうもいかないことが多い。そんな時は、本や映像などの世界にそんな存在を見つけても良い。
「人の欠点は見えても見るな。いいことだけを見るように」
「美しいものはどんな小さなものでも見のがすな」
忙しい時に勇気を与えてくれるのは、いつも一日一日を大切に生きている人の言葉なんだ。
日々の授業と、ビルド&ビルドばかりの仕事に押しつぶされそうになった時、力をふと抜いてくれそうな本。珠玉の言葉は明日からの生活指導にも生かせるだろう。
元小学校長。乱読ならぬ雑読。最近は地域の図書館のホームページで検索するとメールで知らせてくれるので、それに頼りきった主体性のない本選び。「ブックぶらタナカ」を楽しんでます。
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