『天災から日本史を読みなおす』[徒然読書]災害の記憶を後世に

読売新聞教育ネットワークの田中孝宏アドバイザーが、教員の皆さんにお薦めする本を、中央公論新社のラインナップから紹介します!

天災から日本史を読みなおす 先人に学ぶ防災

磯田 道史 著

豊臣政権を揺るがした二度の大地震、1707年の宝永地震が招いた富士山噴火、佐賀藩を「軍事大国」に変えた台風、森繁久彌が遭遇した大津波──。史料に残された「災い」の記録をひもとくと、「もう一つの日本史」が見えてくる。富士山の火山灰はどれほど降るのか、土砂崩れを知らせる「臭い」、そして津波から助かるための鉄則とは。東日本大震災後に津波常襲地に移住した著者が伝える、災害から命を守る先人の知恵。

●初版刊行日:2014/11/25 ●新書判/240ページ ●定価:836円(10%税込)

 

災害の記憶を後世に

 

 そういえば、昔だって地震、台風、噴火と災害はあったよね。あらためてそんなことを考えさせられた。

 

 小説、漫画、テレビドラマ、映画のいずれも、歴史物語はその時代の中心となる人物の活躍場面や転換となる事件などを中心に作られている。でも、その時の天気や災害などの様子が、描かれることは稀だ。

 

 例えば、天正地震の時、近江の長浜城は倒壊。時の城主・山内一豊は愛娘を失うが、城下の震災孤児を育てたこと。伏見地震は、豊臣政権崩壊の始まりとなったこと。知らないことだらけだ。

 

 「災害は歴史の諸所に影響を及ぼしている」と著者。

 

 阪神大震災や東日本大震災の後、教室ではその様子を取り上げ、防災教育に注力した。これからどうしたら良いかを子供たち自身に考えさせ、発表させることにどの学校でも取り組んだと記憶している。

 

 著者が調査で見た古文書には、災害当時の教訓が詳しく記述されていた。経験を後世に残すことは、まさに教育がすべきことだ。災害が続いている。そのひとつひとつの記憶を少しでも多く後世に伝えるべく工夫していきたいと強く思った一冊だ。

元小学校長。乱読ならぬ雑読。最近は地域の図書館のホームページで検索するとメールで知らせてくれるので、それに頼りきった主体性のない本選び。「ブックぶらタナカ」を楽しんでます。

前へ<< >>次へ

(2021年10月 1日 16:09)
TOP