『イギリスのいい子 日本のいい子』[徒然読書]世界の多様な教育観

読売新聞教育ネットワークの田中孝宏アドバイザーが、教員の皆さんにお薦めする本を、中央公論新社のラインナップから紹介します!

イギリスのいい子 日本のいい子

佐藤 淑子 著

優しい子に育ってほしいけれど、自分の意見を言えないようでは困る。自分の意志を持ってほしいけれど、わがままなのはだめ。子どもが育つとき、自己主張と自己抑制が共にできることが大切なのはわかっていても、そのバランスは難しい。両者を等しく重視するイギリスと、自己抑制を尊重しがちな日本を比較教育学を用いて比べながら、子どもたちはどうやってこれらを身につけていくのか、親はそのためにどうすべきかを探る。

●初版刊行日:2001/3/23 ●新書判/208ページ ●定価:748円(10%税込)

 

世界の多様な教育観

 

 日本の教育環境が教育のすべてではない。世界には多様な教育観がある。教育に対する視野を広げ、見直そうと思うきっかけになった一冊だ。

 

 「抑制-抑制型」の日本モデル、「主張-抑制型」のイギリスモデルを幼児教育例で著者は示す。

 

 あまり準備ができず、子どもたちへの視線を欠いた授業は、子どもたちが落ち着かずじっと聞いてくれないことが多い。そんな子どもたちに対して、つい「しっかり聞きなさい」と強制する。また、クラスのほとんどの子が熱心に取り組んでいる授業において、ふざけて取り組まない子どもに対しても、「しっかりやりましょう」と注意する。

 

 こうした指導の在り方が「抑制-抑制型」の日本モデルであると著者は言う。

 

 前者は、子どもが「授業内容がつまらないかわからない」と主張しているのだから寛容に対処する。後者は、人に迷惑がかかることなので厳しく対処する。イギリスモデルでは、こう指導する。

 

 子どもの言語による自己主張を尊重し、大人の権威をただ押しつけるのでなく、むしろ大人と子どもが対等なスタンスであることを演出し、将来のためのソーシャルスキルをしっかり身につけさせる。グローバル化する世界に生きるこれからの子どもたちへの教育を考える契機になるだろう。

元小学校長。乱読ならぬ雑読。最近は地域の図書館のホームページで検索するとメールで知らせてくれるので、それに頼りきった主体性のない本選び。「ブックぶらタナカ」を楽しんでます。

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(2021年12月28日 13:52)
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