[15]人間関係ファンタジスタ
夏休みが終わり、2学期が始まる。桜丘高校では、8月27日が始業式。このエッセイは、26日の夜遅くに書いている。
この時期、「学校が始まる。嫌だな」と思っている子は少なくない。いや、「少なくない」なんて控えめに言っては嘘になる。本当は、世の中のほとんどの生徒がブルーな気分になっている。もちろん先生たちも、かなりブルーだろう。
学校はたしかに楽しいし、卒業式には「もう少しこの学校にいたかった」と泣く子もいる。だが、休み明けの、なんと辛いこと。
体育館の床が受ける振動をエネルギー(電気など)に変換することは、技術的に可能だという。同じように、これだけたくさんの人たちがはっきりと感じているブルーな気分を集めて、何かに役立つエネルギーに変換できないものだろうか。
それでも学校が始まってしまえば、友だちにも会えるし、先生も相談にのってくれるし、まあまあ順調にものごとは進む。2学期初日の放課後には、「なんだ。学校なんて大丈夫じゃん。今までと同じように、なんとかやっていけるぞ」とすがすがしい気分になるだろう。
永遠に迷子になりたくなるような夏からはもう落ちこぼれるね
田丸まひる『硝子のボレット』
ここで真面目な話を。
あなたが自他ともに認める「人間関係ファンタジスタ」であり、誰とでもうまくやっていけるなら、これから先は読む必要がありません。次回のエッセイで、またお会いしましょう。
でも、もし人間関係で、ちょっとでも悩むことがあるなら、次にあげる6つのポイントを、しっかり理解していただきたい。
1.言葉による嫌がらせ(静かに言われたり、ふざけながら言われたりしたことも含む)があったら、必ず、信頼できる人に話そう。
2.態度による嫌がらせ(無視、嫌な顔、仲間外れなど)も同じです。「口で言われていないから嫌がらせではない」ということはありません。
3.嫌がらせをされていい人(嫌がらせをされるべき人)なんて、この世に一人もいません。
4.学校や職場には、いろいろな相談を受けつける窓口があったり、悩みをじっくり聞いてくれる係の人がいたりします。
5.「嫌がらせをされるのは自分が悪いからだ」と思いすぎないでください。もしあなたに何か悪い点があったとしたら、それは対等な雰囲気の話し合いの中で、静かに、心あたたかい励ましとともに指摘されるべきなのです。
6 人間関係で悩まない人は、ほとんどいません。また、どんなときも必ず味方になってくれる人がいます。
こうして偉そうにエッセイを書いている私・ちばさとも、人間関係ではずいぶん悩んできた。今でも悩みがいっぱいある。でも、どんなときも、まわりの人たちにたくさんささえてもらい、今がある。
人間関係ファンタジスタなんて、いない。いや、もしいるとしたら、それは、「まわりの人に『助けて』と言える人」なのかもしれない。
では、みなさん、一緒に秋を始めよう。
目を凝らしてもまっさらな秋空に呼んでくれたらわたしの名前
山階基『風にあたる』
千葉 聡 @CHIBASATO
1968年生まれ。横浜市立桜丘高校教諭。歌人。第41回短歌研究新人賞を受賞。生徒たちから「ちばさと」と呼ばれている。著書に『飛び跳ねる教室』『短歌は最強アイテム』。3月に発売されたショートショート集『90秒の別世界』、ぜひご一読ください。
夏休み中、陸上部の合宿で部員たちと一緒に走り、ずいぶん日焼けしました。今は、3年生の小論文指導と、9月初旬の文化祭の準備を頑張っています。
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