海外で学ぶ・リレーエッセー[59]ニューヨーク州立大学オルバニー校 脳の可能性に魅せられて

大学研究室内で

佐賀県立鹿島高卒、米ニューヨーク州立大学オルバニー校3年(19年11月時点)

畑瀬 研斗 さん

Hatase Kento

 脳に恋して早くも3年目。3年前、青砥瑞人さんという脳神経科学者の方との出会いにより、脳が秘める未知の可能性に魅了され、神経科学の道に足を踏み入れた。この方は、最先端の脳の知見を、医学だけではなく人の成長とハピネス(幸せ)に応用し、AIの技術も活用する、NeuroEdTechという新しい分野を開拓され、新しい人々の学びや、教育をデザインされている方だ。高校3年時、ネット上の一つの記事を見つけたことがきっかけで、たくさんの記事やユーチューブの動画を探し、何度も何度も繰り返し読み返していたことを鮮明に覚えている。

 

 学ぶことに意味を見出せず、苦しんでいた自分に夢と素晴らしい学問を与えてくれた。当時の自分の頭では記事の内容など、ほとんど理解できなかったが、文字を通して伝わる脳や人々の可能性に対し、果てしなく広がっている宇宙のようなロマンと、これまで味わったことがないようなワクワク感を覚えた。モーツァルトの音楽やピカソの絵などあらゆる脳活動の産物の謎に挑戦する面白さも。当時の自分は、心の底から学びたいと思う学問に出会えた喜びで、神経科学が最先端の国で学びたいという思いを抑えることはできなかった。

 

 現在私はアルツハイマー病を研究するラボに所属していて、ここでのワクワクする日々が私の脳内で、たくさんのドーパミンを溢(あふ)れ出させる。私の研究室は神経科学、化学、生物学、コンピューターサイエンスなど様々な分野を専門に学ぶ、異なったバックグラウンドを持つ同士達が在籍している。この多様性と専門性から導き出す独創的な発想こそが私がアメリカで学ぶ本質であり、学ぶ楽しさを教えてくれる。自分が求めていた学びの形であった。

 

 「知れば知るほど、自分がどれほど無知であるのかに気づくよ。それと同時に自分への期待も」。この言葉は私の研究室のボスが発した言葉である。

 

 神経科学は、化学、数学、生物学などあらゆる学問なしでは理解することができない学問であり、また脳の仕組みはまだほんの数パーセントしか解明されていない。だからこそ、一つ知識を得ることで、そこから自分が知らなかったもっと大きな世界の広がりと独創性を見ることができる。彼の言葉を受け、自分への未熟さと、甘さを感じるが、それに伴い、自分の夢の広がりを感じることができた。今は神経科学の文脈を、ヘルスケアを中心にたくさんの人や産業に結びつけたいと思っている。

 

 言葉や慣習が違う国で学ぶことは、これまで育ってきた環境とは違う所に身をおくからこそ、悩みの絶対量も当然多くなる。しかし見方を変えると、成長できる絶対量も増えるはずだ。人の成長には終わりがないからこそ、目の前に感じるワクワクを秘めた困難に対し挑戦し続けていきたい。目まぐるしく変化する時代で、自分という新しいロールモデルを確立すると同時に数年先の自分の変化を楽しんでいきたい。ニューロン(神経細胞)のようにたくさんの枝葉を伸ばして。

大学の広場で友人と談笑(右から2人目)=いずれも本人提供

ニューヨーク州立大学オルバニー校

米ニューヨーク州の州都オルバニーにある。1844年、教員育成機関として創立した総合大学。2017年にノーベル化学賞を受賞したヨアヒム・フランク、1993年にノーベル文学賞を受賞したトニ・モリソンは1980年代、教べんをとっていた。

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(2019年12月25日 09:30)
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