沼田 晶弘
第60回 スーパーの秘密(2)
♦大人も知らない情報教えます
「藤の実フェスタ」のよさは、何と言っても大人の反応がガチで返ってくるところです。自分たちの発表を大人が前のめりで聞いてくれるから、子どもたちに自信がつく。しかしそのためには、大人だって「ホウ」と思うような情報を教えてあげなければいけません。
「パックの牛乳売り場は、賞味期限が迫っているものほど手前にあると思っていませんか? でも実際は、古いものと新しいものが左右に並んでいることが多いんです!」
子どもが観察の成果を披露します。昔よくやっていた陳列方法が「賞味期限切れが近いものほど手前にある」と知れ渡ってしまった結果、奥から取ってしまうお客が増え、売り場の整理が大変になったからです。どうぞ、手前から新しいものをお取りください(全部じゃないけど)というのが最近のスーパーです。
「牛乳、卵、野菜売り場は別々に離れています。いずれも家庭で数日で使い切るものだから、売り場を離しておくと、お客さんが店内を歩き回ることになります。他のいろいろなものが目に入ってきます!」
「お手軽に鍋ができる『魔法の鍋つゆ』がいつも安売りしているのはなぜでしょう? あ、安い→今夜はお鍋にしよう作戦。お鍋って野菜や肉、魚がたくさん必要になるから、スーパーにとってはオイシイんです!」
思い当たることばかりでしょう。保護者たちは大きくうなずいています。
♣真剣に聞く姿勢が子どもを育てる
そのほか、子どもたちが店内フィールドワークで「発見」したことは以下の通り。
こちらはレイアウト(商品配置)研究チームの発表。スーパーがお客に仕掛けている「裏技」をすべて教えます! |
・高い値段の商品の隣に少し安い値段の商品を置くと、すごく安く見える
・精肉売り場の上には赤っぽいライトを置いている。切りたてで新鮮に見えるから
・わざと子どもの目に入りやすい場所に試食コーナーを置いている。子どもが食べればお母さんも食べるから
・売り場の奥に鏡を置いていることが多い。品物が多く見える
・旬や季節感を出すため、野菜や花の売り場は入口に近いところにある
・特売品は必ず前に出している
面白いことに、最初はクラスの子どもの親ばかりだったのが、だんだん別のクラスの保護者も入ってくるようになりました。しかも、一度入ったらなかなか出てこない! 本当に聞き入っている証拠です。子どもたちの説明にも熱が入り、パフォーマンスも大きくなります。つい昨日までほとんど棒読み状態の発表だったのに、見違えるばかりです。
そうです。真剣に聞いてくれる大人たちの「姿勢」が子どもたちを育てているんです。
♥リアル社会と接点がある授業
「スーパーは、お客を呼ぶためにこんな仕掛けをしているんだぜ!」というミもフタもない発表は、お店にとってはあまりありがたくないかもしれません。しかし、実のところボクはスーパーに行くのが大好きで、売る工夫や客の動線の巧みさにいつも感心しています。
ボクが子どもたちに学んでほしいのは、「消費者の目線」でなく「売る側の目線」です。それは言葉を替えると、情報を無条件に受け入れる人間ではなく、情報を冷静に分析し、選べる目を持つ人間、情報を発信する側の人間になってほしいということなんです。
3年生の授業でスーパー研究をやるのは、実は3回目です。1回目は初担任をした2007年、2回目は2009年。2回目の模様については、『ぬまっちのクラスが「世界一」の理由』(中央公論新社)に詳しく書きました。
この授業はまだ終わっていません。子どもたちはこれから、スーパーの担当者に実際に疑問や質問をぶつけに行きます。事前にスーパーの裏も表も研究して行くのですから、大人は真剣に応じざるを得ないでしょう。「子どもだからとナメた答え方はできない」と思うはずです。ここまでやって初めて、「リアル社会との接点がある授業」と呼ぶことができると、ボクは思っています。
フェスタの締めは、名物「ダンシング掃除」。新曲「PERFECT HUMAN」を踊ってます! |
♠締めは恒例、ダンシング掃除で!
「藤の実フェスタ」のボクたちの締めは、保護者の前で恒例の「ダンシング掃除」。昨年の〈5代目〉6年生に比べると(比べちゃいけないんですが...笑)掃除の連携はまだもう一つだけれど、〈6代目〉3年生は吸収が早い! どんどん新曲を投入しています。この日披露したのは、オリラジ率いるRADIO FISHの「PERFECT HUMAN」「GOLDEN TOWER」「ULTRA TIGER」。あの「PPAP」は、練習しなくても勝手に踊ってますよ!。
59<< | 記事一覧 | >>61 |