大分県立大分舞鶴高卒、米ノックス・カレッジ2年(20年5月時点)
冨高 碧惟 さん
Tomitaka Aoi
どうすれば「アメリカ人っぽく」なれるのだろう。大学に入学してから最初の半年間、これは常に私の頭の中にあった。小規模のディスカッションベースの授業や生徒の多様性に惹(ひ)かれてノックス大学への進学を決意したが、言語と文化の壁は想像以上に高かった。
早くアメリカになじみたい、という焦りは、英語のみならず、アメリカ人が好む服装、メイク、性格、テレビ番組、食べ物をも自分に取り込もうとする行動につながった。自分の日本人らしさや日本を感じさせる要素がアメリカへなじむことを阻害しているように感じ、それらを嫌い、否定した。
しかし、大学で時を過ごすにつれ、周囲がそれを自分に全く求めていないことに気付いた。キャンパスを見渡せば、人種という違いに限らず、異なるエスニシティー、宗教、家庭の経済状況、ジェンダーなどさまざまなバックグラウンドを持つ人々がおり、大学はそれぞれの良さを共有し尊重するコミュニティーづくりをさまざまなイベントを通して積極的に行っていた。それは教授の柔軟で生徒思いな対応や、相手の意見を認め合いながら進められるディスカッションなどにしっかりと反映されている。
イベントの一つに、インターナショナルフェアという、留学生が自国の文化を紹介する大きなイベントがある。何十か国かの国旗がはためき、人々の大歓声の中で誇らしげに伝統ダンスを踊る留学生を見たとき、私は、世界各地で何千年もの間、言語や文化、歴史がそれらを愛する人々によって継承されてきたという事実を目の当たりにし、心が震えた。そしてまた、それまで必死に切り離そうとしてきた「日本人の私」を構成するものたちへの愛(いと)しさがこみ上げ、涙が出た。
ノックスのコミュニティーは、自分を自分たらしめるものを愛していきたい、と思わせてくれる。私は将来、アジア圏の途上国の教育開発に政策を通して携わりたいと考えており、教授からの厚いサポートの下、統計学から人権の授業まで幅広く学んでいる。国際機関などによる外部からの一方的な支援ではなく、国の文化や歴史、風土を踏まえた上でその国の発展に貢献できる現地の人材を育成するための教育開発の方法を学んでいきたい。そう思うようになったのは、自分の腕の中にあるものの尊さを気付かせ、他人が抱いているその違いを愛しいと思わせてくれるノックスのコミュニティーがあったからだ。
ジャパニーズクラブのイベントで日本食を振る舞った(右)=いずれも本人提供 |
ノックス・カレッジ
1837年に創立された、米イリノイ州ゲイルズバーグにある米中西部を代表するリベラルアーツ・カレッジ。建学の精神で奴隷制廃止を旗印としており、アフリカ系市民に対して最初に門戸開放した大学の一つ。
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