東京都立小石川中等教育学校卒、米ヴァッサー大学2年(21年1月時点)
杉下 はる さん
Sugishita haru
幼い頃から国際問題に漠然と興味があった。自分と同じ年くらいの女の子が貧困で痩せ細っていること、世界中で戦争が未だ起きていて人生を変えられた人が大勢いること、そのようなことに幼いながら不条理を感じていた。だからと言って、大学で学びたい専攻や将来なりたい職業が明確に決まっていたわけではない。高校生になっていざ進路を選ぶときには自分が卒業後に何をしたいのか全くわからなかった。
だからアメリカのリベラルアーツ教育を選んだのかもしれない。戦争や貧困などの国際問題には政治や経済など様々なことが関わっているのだから、全て学べる場所に身を置くべきだと思った。その中でもヴァッサー大学を選んだのは、必修がほぼなく自分で学びを組み立てられるオープンカリキュラムと分野横断型の授業や専攻が豊富な学際性に惹(ひ)かれたからだ。ここでなら自分がどの学問分野で、どの職業で世の中の不条理と相対したいのか考えられると思った。
大学に入学してから1年半。「世の中の事象には様々なことが関わっている」、入学前の表面的だった考えが現実のものとして腑(ふ)に落ちるようになった。授業では、ナイジェリアの環境汚染に植民地支配時代の影響や資本主義経済がどのように関わっているのか、キリストの肖像画が場合によって人種差別にどのように影響するのか、トランプ政権の発言は哲学的にどのように分析できるか、などの多層的な問いについて様々な分野の文献を読み、教授や他の生徒と、時には違う分野の教授やゲストスピーカーを招いてディスカッションをして学ぶ。世の中の事象をより深く、より多角的に分析できるようになった。自分の思考力の成長を感じる。
ヴァッサー大学の生徒にはマイペースで寛容、そして自分の「好き」に正面から向き合っている人が多い。入学前、私は大学を職業訓練のための知識獲得の場だと捉えている節が少なからずあったように思う。私事で言えば、国際問題に仕事として向き合うために、政治や経済などの様々な知識を得ようと思って入学した。しかし、実際は自分の思考力を高め、その基礎力を持って自分の「好き」ととことん向き合う場なのだと思う。
そしてヴァッサー大学はその「好き」を否定することなく受け入れてくれる人たちが集まる場所だ。そんな素敵な環境で、未だ将来の進路に悩む私はこれからも自分自身ととことん向き合っていきたいと思う。
雪の日の大学図書館。よくここで勉強している(写真はいずれも本人提供) |
ヴァッサー大学
米ニューヨーク州ポキプシーに本部を置く1861年創立のリベラルアーツ・カレッジ。名門女子大として有名だったが、1969年に共学となった。主な卒業生に、女優のメリル・ストリープ。
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海外留学を目指す高校生に進学支援を行っているNPO法人「留学フェローシップ」のメンバーが、海外のキャンパスライフをリレー連載します。留学フェローシップの詳細は>>ウェブサイトへ。