海外で学ぶ・リレーエッセー[73]米マカレスター大「自由な発想」を得た大学での学び

海洋法を扱った授業の資料。国際法の講義では、国際司法裁判所の判決文や国連憲章の条文などを読むことが多い

東京都立日比谷高校卒、米マカレスター大学2年(21年2月時点)

野間 翔介 さん

Noma Shosuke

 アメリカの大学を目指した原点は、高校2年生の時の文理選択にある。機械工学や情報科学などのテクノロジーについて学びたい。いや、でも国際関係学や歴史学も捨てきれない。それに教育学とか経済学とかも面白そうだ。「どちらかを捨てる」ということができずに悩んでいたときに知ったのが、アメリカの大学のダブルメジャー(二重専攻)の制度だった。大学では実際に情報科学、社会起業、経済学、文学、演劇、国際法など、様々な分野の授業を取ってきた。2年生の秋学期に情報科学を専攻することを決意し、現在はこの分野をより専門的に学ぶことを進めている。

 

 ここで得た最も大きな学びは「自由な発想」だと考えている。大学で一番初めに受けた授業「社会起業入門」では教授が常に強調していた「おかしくても実現不可能でも良いからとにかくアイデアを出してみること」を実践するうちに、自分が何か新しいアイデアや解決方法を練っていくことがとても好きであることに気がついた。この授業に限らずマカレスターでは失敗しても良いから挑戦することが評価され、これが私の大学の大きな魅力だと感じている。

スーダン出身(左)、ウクライナ出身(右)の学友とともに、ミネアポリス美術館前で(中央)。大学からは片道1時間かかるが、忙しい大学での生活から離れて息抜きする週末はとても貴重だ

 

 大学生活を送る上で日常に何かしらの形でアートを取り入れることを大切にしており、その一つが1年生のときに取っていた演劇の授業である。机がないスタジオで20人が歩き回ったり、地べたに座ったり、寝転がったりしながら受ける授業は私にとって、とても特別な時間だった。教授はいつも元気な笑顔で生徒を迎えてくれて、生徒ひとり一人を自分の子供のように気にかけてくれる。この授業はただ演劇の練習をするだけでなく、様々な活動を行う中で「演劇」という鏡を通して自分や自分をとりまく他者との関わり方についてより深く知ることができた環境だったと感じている。

 

 アメリカの大学を受験することを決意した高校3年生のとき、日本国内の「学歴のレール」から外れることには、少なからずリスクが伴うと思っていた。しかし「大学受験」という自分らしい選択をする最後のチャンスで「学歴」よりも「自由」を選んだことで、今自分の理想的な学びを実現できていると感じる。

 

 3月中旬から始まる来学期は新型コロナウイルス感染対策によるオンライン授業から1年ぶりにキャンパスに戻ることにした。休学をすることも検討していたが、大好きな演劇の教授が今年の夏で引退してしまうと聞いて、最後にその教授の授業を取るために大学へ戻ることを決意した。愛と笑顔が溢(あふ)れるコミュニティーに戻ることがとても楽しみだ。

大好きなアカペラグループの仲間と(右上端から2人目)、この中で留学生は私一人だけだが、笑顔で迎えてくれた(いずれも本人提供)

マカレスター大学

1874年創立の米ミネソタ州セントポールにある私立のリベラルアーツ・カレッジ。 国際主義、多文化主義を標榜している。主な卒業生に、コフィ・アナン元国連事務総長、のちに駐日米大使に就任したウォルター・モンデール元副大統領ら。

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海外留学を目指す高校生に進学支援を行っているNPO法人「留学フェローシップ」のメンバーが、海外のキャンパスライフをリレー連載します。留学フェローシップの詳細は>>ウェブサイトへ。

(2021年2月27日 09:30)
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