沼田 晶弘
■直角が90度って誰が決めたの?
ある日の算数の授業。教科書では「角度」について学ぶことになっています。
「あのさ、何で直角って90度なの? 100度じゃいけないの?」
いきなり教科書にないことを聞き始めるボクに、子どもたちは「ぬまっち、またかー」という顔をします。
しかし、その時のボクは真剣でした。黒板の前で、本当にそんな"根源的疑問"が降ってきてしまったのです。
その直前、「直角って何度?」というボクの問いに、子どもたちは当然のように「90度!」と答えました。そう、国語辞書で調べても「直角は90度」と書いてあります。疑問の余地はないように見えます。
ん? でもホント?
直角が90度って、誰がいつ決めたの?
■ボク自身が知りたい!
「円は360度。それを4つに分けたのが直角。だから90度!」
塾や通信教材などで先行学習していたんでしょう、こんな風に"的確に"答えた子がいました。
でも、ボクはさらに問いかけます。「円が360度って誰が決めたの? 円を400度にして、直角が100度のほうが計算しやすくない?」
子どもたちがむむっ、と詰まるのがわかります。
まったく、このタンニンときたら......と思ってるのかもしれません。
正直に言いますが、その時、ボクは答えを知って、あえて子どもたちを挑発していたわけではありません。ボク自身が疑問に感じ、「心から知りたい」と思ったことなんです。なんで直角が90度なのか。なぜ円が360度なのか。
辞書にも、円が360度である理由は書いていません。
「みんな、ここで予想してみようよ」とボク。明日に持ち越すと、家のパソコンで調べて「正解」を持ってくる子がいるでしょう。その前に、子どもたちが考える「仮説」を聞きたかったのです。この授業、ちょっと面白くなりそうだぞ、とタンニン的第六感がささやきます。
■子どもたちの予想と「Discover」
子どもたちが立てた予想は次のようなものです。
・昔の人は1日に星が移動する角度を1度と決めた。もとに戻るまで数えてみたら、だいたい360日かかった。だから1年を360日として、円を360度と決めた。本当は1年365日だけれど、ちょっと計算を間違えた。
・360は分かれる数が多いから。
「明日、もう一度考えてみよう!」とボクは言いました。こちらで指示しなくても、子どもたちは勝手に調べてきてくれるとわかっているからです。
翌日、子どもたちの調べで以下のことがわかりました。古代エジプトなどで使われた人類最初の暦では、太陽や月の動きを観測して、1か月30日×12か月で1年は360日だった。それが円=360度の由来。その後、1年365日だとわかっても円が365度にならなかったのは、約数が多くて計算に便利だったから。結果的に、子どもたちの予想はかなり当たっていたわけです。ボクは黒板に「Discover」のワッペンを貼りました。
これで、円が360度、それを4分割した直角が90度であることは(ボクを含めて)クラス全員が納得できました。
しかし、ボクの教科書にないギモンはまだまだ続くのです。
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