任期切れ...再雇用まで2か月 「空白」困った
2017年10月2日 読売新聞朝刊 掲載
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公立小中学校でクラス担任も務める非正規の常勤講師が年度末などに任期切れで一時的に失業状態になる「空白期間」に、講師らの反発が強まっている。名古屋市では今年度の制度変更で「1日」から「2か月」に延び、講師らが2日、総務省と文部科学省に対し、改善を求める要請書を提出する。夏休み中に1か月間の空白期間を設ける新潟県でも「学校の仕事があり、無給でも出勤せざるをえない」と、見直しを求める声が上がっている。
■名古屋「収入なくなる」
「2か月間、収入がないと生活が成り立たない」
名古屋市立小学校で常勤講師を務めていた30歳代の女性は異動を希望し、今春、市外の小学校に移った。
常勤講師の任期は地方公務員法に基づき、事実上1年以内。自治体は繰り返し雇う場合も数日程度の空白期間を設けることが多い。
ところが、名古屋市は今年度、教員の勤務条件を決定する権限などが道府県から政令市に移譲されたのに伴い、ほかの非正規の市職員らに合わせ、「2か月」に変更した。対象は約1000人で、空白期間を3回まで「1日」に短縮できる特例はあるが、2~4年後には適用される。担当者は「任期が一度切れたことを明確に示すため」としている。
愛知県教委によると、今年に入り、制度変更を理由に名古屋市外での勤務を希望し、講師登録した人は少なくとも約10人いるという。
制度変更に反対する常勤講師らは「市民の会」を結成しており、同会事務局長の上村和範さん(61)ら約10人が2日、国へ要請書を手渡す。上村さんは「常勤講師も、責任の重さは正規教員と同じ。安心して働ける制度にしてほしい」と訴える。
名古屋市の「空白期間」のイメージ |
■新潟も1か月
新潟県教委は、小中学校の常勤講師が部活動の顧問などを務める場合、1か月間の空白期間を半分の15日間まで短縮できるとしている。しかし、30歳代の中学校常勤講師の男性は「成績処理や夏休み明けの授業準備のために、空白期間に無給でも出勤せざるをえない」と打ち明ける。
総務省は自治体に、法律上、空白期間を置かなければならない規定はないと通知しており、地方自治総合研究所の上林陽治研究員は「空白期間はなくすべきだ。自治体が人件費の軽減を狙ったとみられても仕方がない」と指摘する。
●「空白期間」めぐり要望書 (2017年10月3日掲載)
公立小中学校で働く非正規の常勤講師が任期切れで一時的に失業する「空白期間」をめぐり、名古屋市が今年度から期間を「2か月」へと大幅に延ばしたことに反発する同市内の常勤講師らが2日、国に同市へ見直しを指導するよう求める要望書を提出した。
名古屋市は今年度、教員の勤務条件を決める権限などが愛知県から移されたことに伴い、同市のほかの非正規職員らに合わせ、空白期間を「1日」から「2か月」に拡大した。2~4年後に適用される。
同日、同市内の常勤講師らでつくる「市民の会」会員らが文部科学省と総務省の担当者に要望書を渡した。
期末手当が減額されるなど勤務条件が悪化した結果、「多くの常勤講師が市外への流出や退職を考える」と懸念を表明。常勤講師らの意見を反映した見直しを市に指導するよう求めた。