教育ルネサンス[4] 非常勤講師 5校掛け持ち
2017年9月30日 読売新聞朝刊 掲載
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非正規の教員には、クラス担任や部活動の顧問も務める常勤講師(臨時的教員)のほか、特定教科の授業を担当する非常勤講師がいる。
東北地方で非常勤講師を務める30歳代の男性は、月曜から金曜まで日替わりで五つの中学校に通う。
担当は技術科で、授業は1日2~6コマ(1コマ50分)。5校で計15クラスを受け持つ。「生徒の顔を覚えるのも大変。でも、学校の掛け持ちをしないと生活が厳しい」と男性は話す。
給料は時給で1コマ約2500円。通勤の交通費や期末手当(ボーナス)は出ない。手取りで10万円前後の月収では家賃などの生活費を賄えず、貯金を取り崩しているという。
この数年、常勤講師を務めながら、正規教員を目指して教員採用試験を受けたが、合格できなかった。部活指導で土日曜も休めないような立場を離れ、試験勉強に専念しようと、今年は非常勤を選んだ。「生徒に関わりたくても、授業以外に時間を持てないのがもどかしい」と男性は言う。
非常勤講師のある1週間のスケジュール |
文部科学省の昨年度の調査では、全国の公立小中学校の教員のうち、非常勤講師は1.2%の約7000人。これは非常勤講師の勤務時間を合計し、週40時間勤務で1人と換算した数字だ。
読売新聞が都道府県、政令市教委に実際の人数を聞いたところ、計3万人を超えた。「非常勤講師への依存度が拡大している。不安定な立場で仕事を続けさせるのは無理がある」と、北海学園大の川村雅則教授(労働経済学)は指摘する。
中国地方で家庭科の非常勤講師を務める30歳代の男性も、公立中学校など4校を掛け持ちしている。
「小規模校などでは教員を多く配置できず、教科によっては、非常勤講師の掛け持ちに頼らざるをえない」と教育委員会の担当者は語る。
男性は学校でテストの採点などが終わらず、自宅で作業することが多い。調理実習の前には休日にスーパーで食材をそろえることもある。授業のない夏休みは無給になるため、プール監視員のアルバイトをした。「他の教員と同じように責任を負っているのに、立場は守られていない」と男性は嘆く。
首都圏の公立中学校で3年前まで社会科の非常勤講師を務めた女性は、パン屋で週3日、仕事の前などにアルバイトをした時期があった。
週20コマ以上の授業を担当し、給料は月10万円ほどだったが、講師として継続的に雇用されるか不安だったという。「教員の生活が安定しないと、生徒に不安が伝わってしまう」。女性はそう訴えた。