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教育ルネサンス[3] 年度末の空白期間は失業


2017年9月29日 読売新聞朝刊 掲載


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 「また会うことがあったらよろしくお願いします」

 3月29日、鹿児島県内の小学校で開かれた離任式。常勤講師(臨時的教員)を務める非正規の30歳代の女性は、子供たちの前に立ち、「別れのあいさつ」をした。3日後に迫った翌年度の勤務先は決まっていなかった。

 常勤講師は、地方公務員法に基づき、基本的に1年ごとに任用され、鹿児島県の場合、3月30、31日の2日間は失業状態になる。任用の「空白期間」だ。自治体によって異なるが、数日間が多い。

 3月30日夕、肌身離さずに持っていた携帯電話が鳴り、女性は校長から「4月からも同じ学校で働いてもらいます」と告げられた。

 「別れ」を告げた子供たちにはばつが悪いが、勤務先が決まり、ホッと息をついた。

 10年近く常勤講師を続けている。毎年2月上旬に教育委員会に常勤講師の申込書を提出し、翌年度の採否の通知があるのは3月20日以降。赴任校は3月末までわからない。正規教員は3月中旬には異動や赴任校が内示される。「非正規は落ち着いて翌年度の準備をする時間もない」と女性は打ち明ける。

 8月下旬、日本教職員組合(日教組)が東京都内で開いた非正規教員の交流集会。グループ討論では、空白期間の問題も取り上げられた。

 「任用が切れ、教員の立場ではなくても仕事をせざるをえない」。佐賀県内の公立小学校で常勤講師を務める50歳代の女性は訴えた。

 佐賀県も空白期間は3月30、31日。「年度末の忙しい時期に重なる。少しでも空白期間を短くしてほしい」と女性は話す。

 日教組が2~4月、非正規教員約2000人を対象に実施したアンケートでは、空白期間中に「仕事をしたことがある」と回答した人は38.2%。仕事の内容では、会議(55.5)や学校行事(47.4%)が多かった。

 

空白期間に仕事をしたことがあるか

 

 一部の自治体では、空白期間を理由に、非正規教員の年次休暇が繰り越せなかったり、期末手当(ボーナス)などが低く抑えられたりする例もみられる。

 総務省は、5月の地方公務員法改正に伴って自治体に通知したマニュアルで、「不適切な『空白期間』の是正を図る必要がある」と明記した。

 北海道のように、常勤講師の任用期間を4月1日~3月31日とし、空白期間を設けない自治体もある。

 総務省の担当者は「任用期間外に働いている実態があるなら、それに合うように期間を見直すべきだ」と話している。


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(2017年9月29日 10:00)
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