教育ルネサンス[5] 即戦力「再任用」に依存
2017年10月5日 読売新聞朝刊 掲載
学校には、60歳で正規教員を定年退職した後、65歳までの間に再び雇われる「再任用」の教員がいる。「正規扱い」だが、非正規の常勤講師らと同様に任期は1年で、給料は低く抑えられている。
「クラス担任の引き受け手がいない。力を貸してほしい」。千葉県内の公立中学校。再任用2年目を迎えた教員の男性は、校長から頼み込まれた。
担任になれば、授業に加え、生活指導や進路指導、保護者対応といった負担が増す。「指導力への不安もあって担任を敬遠する若手教員は少なくない」と男性は言う。運動部の顧問も務め、仕事の内容も、責任も定年の前と変わりはない。
だが、給料は手取りで月20万円余りに半減したという。それでも男性は「教員経験を生かし、少しでも役立ちたい」と語る。
再任用には、男性のような常勤(フルタイム)と、非常勤の短時間勤務がある。文部科学省の調査では、その両方を合わせた再任用教職員は、公立小中学校で2010年度の5820人から16年度は1万7088人と3倍になった。年金の支給開始年齢が60歳から引き上げられた事情もあるが、ベテラン教員の大量退職による「穴」を、非正規教員とともに埋めている状況が浮かぶ。
公立小中学校の再任用教職員数(文科省調査をもとに作成) |
「仕事の負担や責任の重さを嫌い、管理職を目指す教員が減った。再任用で補っている面もある」と都教委の人事担当者は説明する。
この校長の場合、年収は手取りで500万円台で定年前の7割だという。
大阪府内の公立中学校で再任用2年目の校長も、年収は4割近く減った。
「子供の成績に納得がいかない」といった保護者のクレームにも対応し、土日曜のいずれかは地域行事への出席などでつぶれることが多い。定年前から取り組んだ「学校改革」を続けたいと再任用を希望した。「給料だけ考えれば割に合わないが、やり残したことをやれるチャンスだと前向きに考えている」と校長は話す。
兵庫教育大の川上泰彦准教授(教育行政学)は「即戦力としての再任用に過度に依存すれば、将来の学校を支える人材の採用や育成を狭めてしまう恐れがある。バランスの取れた採用計画が必要だ」と指摘する。