求む!非正規教員 ハローワークに130人分 14道県
2017年9月27日 読売新聞朝刊 掲載
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公立小中学校で非正規の教員が不足し、ハローワークに求人を出すケースが増えている。その人数は今月15日現在で埼玉、兵庫、福岡など14道県で130人以上。各地の教育委員会は近年、ベテラン教員の大量退職などで開いた「穴」を、給料が安く立場も不安定な非正規教員で埋めてきたが、限界に近づいた格好だ。
■「正規」の穴埋め 限界
「正規教員の育児休業等の代替として勤務」「基本給(月額平均)16万3300~20万2400円」――。
福岡市教委がハローワークに非正規の小中学教員の求人を初めて出したのは今年7月。臨時的教員としてクラス担任も務める常勤講師ら約50人を募集したが、今も約20人足りない。
市教委の担当者は「他の教員が授業数を増やしたり、部活動の指導をカバーしたりせざるをえない」と話す。市教委では、教員採用試験の受験者らに呼びかけ、講師の候補を登録しているが、それだけでは足りず、ハローワークにまで「アンテナ」を広げたという。
全国のハローワークの検索サイトでは、公立小中学校の常勤講師の求人は9月15日現在で少なくとも14道県(政令市含む)の計134人に上り、福岡(39人)、鹿児島(16人)、埼玉(14人)、兵庫(13人)、大分(同)などが多い。
非正規教員は産休・育休の欠員などの補充を想定していたが、実際にはそれ以外に4万人以上が正規教員の代わりを務め、クラス担任や部活動の顧問になっている人もいる。第2次ベビーブーム(1971~74年)で児童生徒が多かった時代に大量採用された教員が定年退職し始める中、各地の教委が将来の子供の減少に備え、正規教員の採用を抑えた影響も大きいという。
「正規教員が本来担うべき仕事に、人件費の低い非正規教員を多く充ててきたが、教職全体の待遇を良くしなければ、志望者は集まらない」と慶応大の佐久間亜紀教授(教員養成論)は話す。少人数学級や複数の教員を配置する「チームティーチング」に非正規教員を充てる例も増えた。
名古屋市教委は昨年12月、市内のコンビニエンスストア約350店に市立学校の講師を募集するポスターを貼りだした。今月15日現在、小学校3校で欠員の補充ができず、「1人でも多くの候補を確保したい」と市教委の担当者は語る。福岡県内では、小中学校の保護者らに「教員免許状をお持ちの方は連絡を」とメールやチラシで呼びかけたケースもあった。
●「臨時免許」発行 年5000件
教員免許を持った人を採用できない場合、「臨時免許」を発行して助教諭とする例もみられる。
埼玉県内の公立小学校では、特別支援学級の担任教員が病気で休み、女性助教諭(24)が後任を務める。女性が持つ教員免許は中学校の保健などだが、県教委は臨時免許の発行で小学校でも教えられるようにした。「子供たちの指導は手探りの連続だった」と女性は話す。臨時免許は3年間の特例措置で、全国の小中学校での発行は年約5000件(2015年度)に上る。
この小学校では10月に教員1人が産休に入る予定で、校長(57)は「夏休み前から若手教員の知り合いや退職者に声をかけるなど手を尽くしているが、後任が見つからない」と苦渋の表情を浮かべた。
[MEMO] 臨時的教員
教員免許を持ち、正規教員とほぼ変わらない職務を行う。地方公務員法の規定により1回の雇用期間は最長1年だが、年度途中で一度解雇し、繰り返し雇用される例が増えた。正規教員が出産育児などで休職する際に雇う代用教員らを除いても、全国の公立小中学校に4万1030人(2016年度)いて、定員の約7%を占めている。
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