読売新聞教育ネットワークの田中孝宏アドバイザーが、教員の皆さんにお薦めする本を、中央公論新社のラインナップから紹介します!
ちっちゃな科学 好奇心がおおきくなる読書&教育論
かこさとし/福岡伸一 著
子どもが理科離れしている最大の理由は「大人が理科離れしている」からだ。ほんのちょっとの好奇心があれば、都会の中にも「小自然」が見つかるはず。90歳の人気絵本作家と、生命を探究するのハカセが「真の賢さ」を考察する。科学絵本や里山など、子どもを伸ばすヒントが満載。
●初版刊行日:2016/4/7 ●新書判/200ページ ●定価:880円(10%税込)●ISBN:978-4-12-150551-4
小自然で養われる直観
大自然の反対はなーんだ? 答えは、「小自然」。
「身近な自然(小自然)の中から動物や植物、虫たちの活動に気づき見つけることがスモールサイエンス(ちっちゃな科学)です」
小学校長時代に幼稚園の園長を兼任したことがある。たまたま校長室の窓の外に園庭に続く小さな庭があった。時々、園児たちがその庭に探検に来る。石の下にいる虫を見つけたり、飛んできた蝶を追ったり。木々の間の小さな隙間を見つけて自分たち専用の道を作ったりしていた。
窓からわたしが、顔をのぞかせると、競ったように「ダンゴムシいたよ。園長先生トカゲ見なかった?」と発見したことの報告と質問をしに来る。まさに彼らはスモールサイエンスをしていたんだ。
子供たちには、小自然の中で養う感覚や直感「センス・オブ・ワンダー」がとても大切だ。と、かこさとしと福岡伸一は、伝えてくれる。
ほかにも、理系・文系の違いや総合的な学習の授業プラン提案、お薦めの絵本の紹介など明日からの授業に使えそうなネタもあり、お得な一冊だ。
読後、近くの公園にあるビオトープを思わず探検しているわたしがいた。そうそう、大人になっても「センス・オブ・ワンダー」は失いたくないものだ。
元小学校長。乱読ならぬ雑読。最近は地域の図書館のホームページで検索するとメールで知らせてくれるので、それに頼りきった主体性のない本選び。「ブックぶらタナカ」を楽しんでます。
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