『理科系の作文技術』[徒然読書]感性だけでは伝わらない

読売新聞教育ネットワークの田中孝宏アドバイザーが、教員の皆さんにお薦めする本を、中央公論新社のラインナップから紹介します!

理科系の作文技術

木下是雄著

物理学者で、独自の発想で知られる著者が、理科系の研究者・技術者・学生のために、論文・レポート・説明書・仕事の手紙の書き方、学会講演のコツを具体的にコーチする。盛りこむべき内容をどう取捨し、それをどう組み立てるかが勝負だ、と著者は説く。文のうまさに主眼を置いた従来の文章読本とは一線を劃し、ひたすら「明快・簡潔な表現」を追求したこの本は、文科系の人たちにも新鮮な刺激を与え、「本当に役に立った」と絶賛された。

●初版刊行日:1981/9/22 ●新書判/256ページ ●定価:770円(10%税込)●ISBN:978-4-12-100624-0

 

感性だけでは伝わらない

 

 教えなければ書けない文章がある。そう気づかせてくれたのがこの本だ。

 

 「その時、どんな気持ちでしたか、どう思いましたか」

 

 作文の時間によく子どもたちに声をかけた。遠足などに行った時に、どんなことがあって自分がどう思ったか。自分の気持ちや友達への思いやりなど子どもたちは素直な言葉で表現してくれた。子どもたちの感性は、楽しい言葉を紡ぎ、作文ができあがった。

 

 一方、そうした心情を排して、情報を他の人に伝えるための文章ついては、わたしは指導した覚えがなかった。この本には、正確に情報を伝え、筋道を立てて意見を述べるにはどうすればよいか、その技術が丁寧に書かれている。

 

 学習指導要領が改訂されて、論理的な文や実用的な文が重視されている。書くことは読むことにもつながり、読解力の向上も望める。兵十(「ごんぎつね」新美南吉)の気持ちや松井さん(「白いぼうし」あまんきみこ)の思いに想像を巡らすばかりが読解ではないはずだ。

 

 「わたし漫画しか読みません」などと謙遜していた若い君。

 

 この本、漫画版も出版されていて、いろいろ参考になることが加えられている。教師が今こそ読むべき本であると絶賛したい。

『まんがでわかる 理科系の作文技術』

●木下是雄 原作/久間月慧太郎 作画 ●初版刊行日:2018/1/22 ●四六判/176ページ ●定価:1320円(10%税込)●ISBN:978-4-12-005042-8


主人公、新田文は日々仕事と格闘している皆さん自身です。良き先輩や仲間に支えられながら成長していくストーリーはテレビドラマのように後をひく内容になっています。原作1章分の内容が約5分で読み進められますので、忙しい仕事の合間に読める入門書です。

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(2021年6月 2日 10:00)
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