2030 SDGsチャレンジ

じぶんごとからはじめよう®

SDGsトーク4(下)「和」に通じる「もったいない」

 よりよい未来をめざし、先生や専門家たちからSDGs(持続可能な開発目標)にまつわる話を聞く連載「SDGsリレートーク 『じぶんごと』からはじめるために」。絵本「もったいないばあさん」で大人気の絵本作家、真珠まりこさんと、読売新聞教育ネットワーク事務局アドバイザー、田中孝宏さんの対談は、日本文化の「和」の心もテーマになりました。

 

まとめ:住吉由佳(教育ネットワーク事務局)


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田中 もったいないばあさんのアニメが8月にフランス語や中国語などでも公開されました。

 

真珠 在日本インド大使の発案で、環境省の方が提案してくださり、世界的なNPOの協力を得て実現しました。6か国語のアニメになることで、これまで絵本を見たことがない世界の人たちにも見てもらえたらと思います。

 

田中 日本より、外国の方が多く見られているんじゃないですかね。「もったいない」という日本語が、広く外国の方に知られているのではないかと思います。

 

真珠 「もったいないばあさんの知恵袋」という本を作るときに、暦や伝統行事のことを調べたんですが、昔から大切に守り伝えられてきたことには、子どもたちの成長と幸せを願う気持ち、家族の健康を願う愛情がたくさんつまっていることに気がつきました。また、和食が世界無形文化遺産になった時に、「和」の意味を調べて書いたことがあるんですが、日本を表す「和」という漢字には、「違いがあっても、一緒にいることを楽しむ」という意味があると知って、感動したことがあります。私は、日本では、みんな同じではみ出さないのが良い、みたいに思っていたんですが、もともとの和の意味が、「違いがあっても、それぞれが大事にしていることを尊重して、違いを楽しみ、一緒にいることをも楽しむ」という意味だとしたら、とっても素晴らしいと思ったんですね。

もったいないばあさんの知恵袋

2016年、講談社刊。作/絵・真珠まりこさん。日本の風習や伝統行事、和の文化、昔ながらの知恵などを紹介しながら、もったいないばあさんがどんな時に「もったいない」と思うのかなどが書かれているエッセイ本。

 

田中 お祭りで「わっしょい」って言いますよね。あの「わ」は「和」のことなんです。

 

真珠 「わっしょい」の「わ」も和なんですか、ほんとに?

 

田中 お祭りが好きでよく参加するんですが、集まってみんなでわいわいがやがや。あの時は、本当に人種とか関係ない。そういう気持ちって日本人、ずっとあるんですね。

もったいないばあさん音頭をインドの子どもたちと踊る真珠まりこさん(2017年3月)

 

真珠 私は、「和」は、「もったいない」の心そのものだと思うんです。もったいないは、「敬う心」です。自分さえよければと思わず、分け合い、人が大事にしていることを同じように大切に思うこと。民族や国や宗教や言葉や文化が違っても、自分たちだけが正しいというのではなく、他の人や国をリスペクトすれば世界は平和になる、というもったいないばあさんからずっと伝えてきたことが、和の心と同じで、それを昔から大切にしてきたのだとしたら、日本って素晴らしい!と誇らしく思いました。インドの子どもたちに、「みんなインド好き?」って聞くと、「イエーイ!」って笑顔で答えてくれるんです。それを見た時に、日本の子どもたちに「日本好き?」って聞いても、「イエーイ」とは言わないのでは......と思って、ちょっと寂しい気持ちになりました。国民性もあるかもしれないけど、私たちは、日本のいいところを学ぶ機会があまりないんじゃないかなって。自分の国や町を誇りに思う気持ちは大事だと思うし、日本の子どもたちにも、日本のこと好きになってほしいです。

 

田中 この春まで校長として勤めていた小学校では、この子たちが街を出た時に、自分の町について語れて、この町のよさ、直さなきゃいけないところ、課題とか、そういうものをひっくるめて説明できることが大切なんじゃないかと教職員たちと話していました。あの子たちが将来どこへ行っても、自分の生まれた町はどんなところか説明できるようになれば最高だな。

 

真珠 そこに行き着くと思うんですよね。自分の住んでいる国や町を誇りに思うというのはとても大切で、そうなったら、もっと1人1人が、その町を守ろう、よくしようと、自分にできることをしたいと思うようになるんじゃないかなって。それがすごく大事だと思います。

「もったいないばあさん」ヒンディー語版の絵本を届けたインドの学校で子どもたちと写る真珠まりこさん(2018年8月)
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(2020年9月26日 10:00)
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