2030 SDGsチャレンジ

くらしにSDGs

大型水槽で身近な生き物の暮らし学ぶ(東京・板橋区立緑小学校)

 

 水の中を気持ちよさそうに泳ぐ魚たち。私たちも、見ているだけで心が安らかになりますよね。そんな魚たちの姿を見ながら、身近な生き物たちが暮らす環境について考えてもらおうという出前授業が、東京都板橋区の小学校で行われました。

 

大きな水槽使って授業

 

 「このお魚の名前は、ハッピーでしょうか?グッピーでしょうか?」

 

 大きな写真のパネルを見せながら、子どもたちに話しかけるのは、「アクア・アート」という会社の伊東大輔さんです。アクア・アートでは、会社や病院、老人ホームなどの施設に水槽を貸し出すことで、働く人や施設を訪れる人に、安らぎを感じてもらう仕事をしています。

 

 伊東さんは、水槽の中の水草などを上手に手入れすることで、魚たちが気持ちよく過ごし続けられることを、大きなボードを使ってわかりやすく説明します。また、環境破壊などで絶滅が心配されている「日本バラタナゴ」という魚を、いろいろな工夫を重ねながら、自分たちで増やしたことなども話しました。

 

「答えは、グッピーでした!」

 

子どもたちから歓声が上がります。

 

 授業を受けたのは、板橋区立緑小学校に通う1・2年生の子どもたちです。小学校は7000人以上の人が暮らす大きなマンションの近くにありますが、名前の通りたくさんの緑に囲まれています。春はタケノコ掘り、秋は竹細工と、様々な体験を通して、環境を守るために自分たちにどのようなことができるかを考えています。2022年の4月には、地域の人たちと力を合わせた「ビオトープ」も完成し、メダカや水草など、水の中の生き物たちのくらしについても自然に学べる環境が整いました。

 

 

「外来種」わかりやすく説明

 

 そんな子どもたちも、パネルで見せられるアメリカザリガニや、ミシシッピアカミミガメなどを実際に見たことがある、という子はあまりいません。伊東さんと一緒に授業を担当した池守倭人さんが、元々は日本に居なかったこれらの生き物が、人間の都合で連れてこられ、日本の環境を変えてしまったことを説明すると、子どもたちからは「かわいそう!」という素直な感想が上がりました。

 

 会場の体育館には、横幅が1メートル以上もある大きな水槽が2つ運び込まれ、100匹以上の魚たちが暮らす環境が、水草も植えられて再現されました。授業の後には、水槽の周りに子どもたちの大きな輪ができます。「小さいエビもいる!」「この貝は何を食べるの?」子どもたちは、魚以外の生き物が水槽の中を掃除していることや、魚のフンを栄養にして水草が元気に育つことなどを、楽しみながら学びました。高学年の子どもたちでも、ただ説明を聞くだけではなかなかわからない「生態系」の仕組み。実際に水槽で暮らす生き物たちを見ながら授業を受けたことで、小さな子どもたちもしっかりと理解することができました。

 

生き物の暮らしを守るために

 

 「慣れない環境に連れてこられ、必死に生き残っているのに、数が増えるとまた人間の都合で減らされてしまいます。こんなかわいそうな生き物を出さないために、絶対にペットを逃がしてしまうことのないようにしましょう」と池守さんは訴えます。生き物を飼うことは楽しいけど、きちんと責任を持って飼わないと、自分たちの暮らす環境を壊してしまうかもしれない――。子どもたちは短い授業を通じて、たくさんのことを学びました。

 

 授業を見守った市之瀬輝明校長先生は、「ただ知識としてSDGsを勉強するだけではなく、1人1人が環境について考えられるようにしたいですね」と話します。授業を担当した伊東さんも「1年生からSDGsのことを考えている、すばらしい学校ですね」と目を見張りました。2022年には「ユネスコ・スクール」にも認定された緑小学校。子どもたちは、SDGsの目標達成の主役になろうと、張り切っています。

 


(2023年2月 7日 08:30)
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