第59回日本学生科学賞の入賞者決まる

内閣総理大臣賞を受賞した早川君

 第59回日本学生科学賞(読売新聞社主催、科学技術振興機構共催、旭化成協賛)中央最終審査が2015年12月22、23の両日、東京都江東区の日本科学未来館で行われ、中学、高校それぞれで内閣総理大臣賞など各賞が決まった。24日には同所で秋篠宮ご夫妻をお迎えして中央表彰式が行われた。内閣総理大臣賞には、中学校の部で京都市立桃陵中学校3年早川優希君が、高校の部で三重県立伊勢高校2年矢口太一君が輝いたほか、計30点が文部科学大臣賞、環境大臣賞、科学技術政策担当大臣賞、読売新聞社賞、旭化成賞などに決まった。

 

 同賞は地方の予備審査を入れると約6万人の生徒が参加。中学、高校合わせて中央審査に284点の研究が出品された。さらに最終審査には中学校の部15点、高校の部15点が残り、同館に研究発表ブースを設けて2日間にわたり、審査委員に研究内容を説明した。
 
 中学の部で内閣総理大臣賞に輝いた早川君は「順風満帆~爽を極める~」と題した研究。昨年の第58回で「順風満帆~快を極める~」で文部科学大臣賞に輝いている。その研究をさらに進めて、動植物の形を応用し、団扇の紙質など徹底的にこだわって「風の奥行きと広がり」を両立させたオリジナル団扇を作った。「ほしいと思っていた賞をいただき驚いている。国際学生科学フェア(ISEF)にも参加できることになり光栄です」と話した。

 

 高校の部の矢口君の研究は、「セミの離陸飛行〜セミの後翅(こうし)はなぜあるのか〜」。セミが飛ぶ際や飛行するときに後ろ羽はどういう役割を果たしているかについて7年間観察してきた研究の集大成だ。ハイスピードカメラなどを使って解き明かしたこの研究を基に「セミを模倣した小型飛行ロボット」に関する特許を出願している。表彰式では父・昌義さんの隣で万感迫る思いで涙を見せながら自分の名前が呼ばれる瞬間を待っていた。「中学2年生のころから研究してきました。これまで学生科学賞に応募してきましたが、内容が甘くうちのめされてきました。本当に信じられません」と喜んだ。

 

 表彰式では長濱嘉孝中央審査委員長が「研究のテーマ材料は実に多様でした。物理分野では中学、高校ともに身近な題材を扱った研究が多く、その中でも中学の部で内閣総理大臣賞を受賞した作品は動物や植物の構造を応用することで、すがすがしくさわやかな風を作り出すことに成功しました。化学分野では中高ともに電池や電気分解を扱った研究に優れたものが見られ、生物、地学分野では例年のように面白い動物や植物、自然現象を研究対象に選び詳しい観察を続け結論へ達した研究が多くでました。高校の内閣総理大臣賞を受賞した研究ではアブラゼミの飛行を詳細に観察したものでいくらか追加実験を行えばすぐに学術論文になるようなハイレベルな作品でした」などと講評した。

 

 長濱委員長は最後に「研究を進めるうえで文献など情報の取得は必要で、近年の情報技術の進歩により以前に比較して格段に容易となりました。しかし、研究の成果をうまくまとめ発表するためには十分なトレーニングが必要です。アメリカで毎年開催されるISEFで学生科学賞の代表は高い評価を得ています。作品の完成度を高め、学生科学賞に甘んじることなく日本代表として世界の同年代の人たちと競い、交流することは将来にわたり貴重な体験となるに違いありません」と激励した。

 

以下入賞者(敬称略。共同研究は学校名のみ)

◇内閣総理大臣賞 【中学】京都市立桃陵中・早川優希 【高校】三重県立伊勢高・矢口太一

◇文部科学大臣賞 【中学】八丈町立三原中(東京)▽出雲市立第三中(島根)片岡柾人【高校】広島県立府中高▽広島学院高・西村啓佑

◇環境大臣賞 【中学】千葉市立稲毛高付属中・稲川翔子 【高校】渋谷教育学園幕張高(千葉)

◇科学技術政策担当大臣賞 【中学】和光市立第二中(埼玉)岡野美聡 【高校】清心女子高(岡山)

◇全日本科学教育振興委員会賞 【中学】仙台市立第一中・浅利夏希 【高校】滋賀県立米原高

◇読売新聞社賞 【中学】福井大付属中・坂本孝義 【高校】秋田県立秋田中央高

◇科学技術振興機構賞 【中学】新潟市立白新中・山田幸大 【高校】埼玉県立坂戸高

◇日本科学未来館賞 【中学】金沢市立緑中・坂本友理香 【高校】大分県立大分豊府高

◇旭化成賞 【中学】成田市立玉造中(千葉)安井風菜 【高校】東京都立葛西工高・久松厚介

◇読売理工学院賞 【中学】調布市立第八中(東京)石山翔雲 【高校】高知県立春野高

◇優秀賞 【中学】郡山市立郡山第六中(福島)▽ふじみ野市立大井東中(埼玉)▽八丈町立三原中(東京)▽刈谷市立朝日中(愛知)【高校】埼玉県立浦和一女高・岡部七子▽名古屋市立向陽高▽熊本県立熊本西高▽大分県立別府鶴見丘高

◇学校賞 八丈町立三原中(東京)▽広島大付属高

◇指導教諭賞 元千葉県立安房高・野曽原友行▽新潟市立白新中・山内伸二

 

日本学生科学賞のホームページはこちら>>

 

主催=読売新聞社

共催=全日本科学教育振興委員会、科学技術振興機構

後援=内閣府、文部科学省、環境省、特許庁

協賛=旭化成

(2015年12月28日 14:54)
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