こんにちは。新聞活用学習・NIEのナビゲーター、ヤクだよ。きょうは気になる新聞記事を教科別に分類して掲示する実践を紹介するよ。社会と自分を関連づけて考え、有権者になったつもりで投票する「模擬投票」がスムーズにできるようになり、主権者意識を育てることにも役立つんだって。
ヤクは、ユーラシア大陸の高地に生息する、ウシの仲間。NIEを通して、これからの社会を生き抜く上で"ヤク"立つ力が子どもたちにつくよう、ヤク先生が応援していきます。
週直が毎日、好きな記事1つ選ぶ
今回お話を伺ったのは、3月まで千葉県鎌ヶ谷市立鎌ヶ谷中で3年生を担任し、この春から同県立国府台高校で教える大塚功祐教諭。大塚先生は鎌ヶ谷中の前にいた高校で2014年から、この新聞コーナー作りを行ってきてるんだって。毎日、週直が好きな記事を1つ切り取って、廊下に記事を貼りつけていく。「八村NBA指名」から「米朝会談」「新潟震度6」「イラン核製造」「年金」...。いろいろな生徒が選ぶからニュースの幅が広くて、掲示コーナーの記事を見て、「こんなことがあったんだ」って立ち止まって読む生徒も多いそうだよ。
週直が選んだ新聞記事が貼られた廊下のコーナー(鎌ヶ谷中で) |
さらに教科別に分類
壁に貼られた記事がたまってくると、新聞係や委員会の生徒が分類し、廊下の別スペースに設けられた教科別の新聞コーナーに貼り直すんだ。合唱祭が近づけば「音楽」、体育祭が近づけば「体育」の記事が増えてきて、イベント前になると、その一角に人だかりができることも。去年は京都への修学旅行前に、「あと○日!」っていう見出しと一緒に、「修学旅行コーナー」が作られたよ。
大塚先生が昨春、作って掲示した修学旅行コーナーの新聞の見本 |
社会や道徳、学活で「まわしよみ新聞」も
教科別スクラップは、ここからまた発展して、生徒たちの手で、「新聞を読んで これからの日本を考えよう」とか「オリンピックまであと1年」とか、どんどんテーマ性のあるコーナーができていったんだって。新聞を通して、社会のニュースについて楽しみながら親しんでいくんだね。大塚先生がしたことといえば、補足記事を貼るくらいだったんだって。こうした取り組みが授業にもつながり、社会や道徳、学活などでは、テーマに基づいて記事を探したり、持ち寄った記事にテーマをつけたりして一枚の新聞にまとめる「まわしよみ新聞」の実践を行ったんだって。
持ち寄った記事にテーマをつけた「まわしよみ新聞」で作られた授業作品(鎌ヶ谷中で) |
模擬投票にも発展
大塚先生が、一番力を入れていたのは、国政選挙前に生徒たちが行う模擬投票。8年前から、すべての国政選挙で実施してきていて、その授業では、生徒たちが有権者や立候補者になったつもりで新聞に載った政策を読み比べ、選挙についてみんなで意見を交わすんだって。
模擬投票前に、新聞に載った国政選挙の記事について話し合う生徒たち(鎌ヶ谷中で) |
日頃から社会に触れる
中学生も高校生も、18歳になったら選挙権を持つ大人としての自覚を持たなければならないから、中学高校の段階で模擬投票を経験しておくのは、大切だね。大塚先生は「新聞スクラップを通して日頃から社会のニュースに触れていることが、とても大切。模擬投票は、新聞を使った事前学習がないと成り立たない」とも話していたよ。
新聞を読んで議論し、理解を深めた後に行われる模擬投票(鎌ヶ谷中で) |
大塚功祐先生
新聞スクラップは、多くの生徒が楽しみながら、世の中の動きを「自分事」として考えていくことに近づける実践です。こうして新聞に慣れたことで、国政選挙前に新聞に載った政策を読み比べ、有権者になったつもりで模擬投票する、社会科の実践にもつながりました。「18歳になったらどう投票するか」という主権者意識を、生徒たちに今の段階から考えてほしいと願っています。
大塚先生は、臨時休校中も、新聞記事から川柳を作って五七五に思いを込めてもらったり、100年後の人に手紙を書いて「時代の証言者」になってもらったりするなど、新聞を活用した課題を高校生に出しているんだって。生徒たちの作品が楽しみだね。
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