こんにちは。新聞活用学習・NIEのナビゲーター、ヤクだよ。きょうは、クイズで遊び心をくすぐりながら、新聞記事を使って、自分の考えと根拠をまとめる「現代社会」の授業をのぞいてきたよ。未来を見据えて「考え方のトレーニング」をする、将来に欠かせない学びなんだって。
ヤクは、ユーラシア大陸の高地に生息する、ウシの仲間。NIEを通して、これからの社会を生き抜く上で"ヤク"立つ力が生徒たちにつくよう、ヤク先生が応援していきます。
「政治参加」って言うけれど...
訪れたのは10月16日、神奈川県の南端・三浦半島にある県立三浦初声(はっせ)高校和田キャンパス。鎌倉幕府誕生で活躍した武将・和田義盛のお城跡近くの学校では、ミカンなどの果物や野菜、花、牛...いろいろ育成中で、近くの小学生も植物や動物の育て方を在校生に教わりに来るんだ。この日は都市農業科1年生約40人が「現代社会」の授業を受けていたよ。これまで日本国憲法を学び、今回は「世論と政治参加」がテーマなんだって。授業の始めに金子幹夫先生が「政治に参加して、と言われても、具体的にどうすればいいのって思うよね。今日はそのトレーニングをします」と話し出した。
黒板に「考え方のトレーニング」と大きく書く金子先生 |
1つの新聞記事をバラバラにカード化
黒板に「考え方のトレーニング」と大きく書いて、金子先生は名刺大のカード6枚を1人1人に配ったよ。カードには、コメの「減反政策」について書かれた文章が6分割されていて、「順番がバラバラになってしまった。金子ちゃんを助けると思って、カードを並べ直して!」。楽しげに呼びかける金子先生に、生徒たちはクスッと笑いながら、1枚1枚、カードを順番に並べ始めたよ。
「実は、このカードの元の文は、新聞記事です」と金子先生が種明かし。元の記事を全員に配ってから、内容を分かりやすく説明してくれた。生徒たちは、カードの並べ直しで記事の内容がだいたい頭に入ったみたいだ。「減反政策はなぜ始められたのですか。教科書のここに書いてある、と根拠をつけて答えて」と金子先生が呼びかけると、生徒たちは教科書を読みながら答えていく。これが、考え方を鍛える上で大切な「根拠」を示すトレーニングになるんだって。
カードを順番に並べようとする生徒 |
記事をバラバラにしたカード |
新聞の写真から入ることも
次は、2日前の新聞に載っていた1枚の写真を金子先生が見せて、「これは何の写真?」と尋ねたよ。正規雇用の社員と非正規雇用の社員の待遇格差を認める裁判記事の写真だ。掲げられた「不当判決」の文字が目に焼きついた。金子先生はこの記事の書き出しを読み上げて、生徒たちは聞き取った記事をノートに書き出していたよ。その後、配られたプリントを使って、質問が記事の内容と合っているかどうか、○か×で答えるクイズをして、記事に取り上げられたニュースへの理解を深めていたよ。
この日の朝刊には、別の裁判で正社員と非正規社員の待遇格差を認めないっていう判決の記事が載っていて、金子先生は、この記事も生徒たちに配って、分かりやすく説明。「二つの裁判結果についてどう思ったか、理由も記事を基に書いてください」と付け加えた。生徒たちは「私は、格差はいけないと思います、なぜなら...」などと、配られたプリントに自分の考えと、そう思った理由や根拠を、新聞記事の文章から探しながら、じっくり書き込んでいたよ。
非正規社員の待遇格差についての記事に対する考えをまとめる生徒 |
他人の意見を知って新たな発見も
思い思いに生徒たちの考えが書かれたプリントはいったん回収し、クラスの誰が書いたのか分からないようにして配り直し、それぞれほかの人が書いた感想を読んでから、さらに自分の感想を書き込み、プリントを集め直して、授業が終了したよ。授業後、最初に書いた生徒にプリントは戻ってきて、新たに誰か他の人が書いた感想を知ることができるんだって。「他の人の意見を知れば、また新たな発見がある」と金子先生は話していたよ。
裁判記事について考えが書かれたプリントを回収する生徒たち |
「未来を決めるのは私たち」という姿勢へ変化
こんなふうに、「減反政策」や「非正規社員の待遇格差」など、ニュースを通して社会の仕組みを理解し、自分の頭で考えるトレーニングをすることが、学習の単元「世論と政治参加」で大切な「社会を知り、自分の頭で考え、行動する」ことにつながるんだって。
授業を終えて、金子先生は「目・耳・体で新聞記事を吸収しながら、生徒たちは『選挙で候補者を選ぶ時に、未来を決めるのは私たち』という姿勢に変わってきた。彼らが長い長い人生を幸せに生きる方法として、未来を見据えて今を考えるようになってもらえたらうれしい」と話していたよ。
直近の新聞を黒板に貼り、ニュースについて話す金子先生 |
金子幹夫先生
クイズなどで新聞記事の内容を理解し、記事から根拠を見つけ、自分の考えをまとめる実践を授業で続けています。時代の流れを読み取るため、新聞は必要です。この実践を積み重ねてきて、一時の感情で動かず、将来を見据えて考える生徒が増えていると感じます。「これからの私たち」と、未来を意識する生徒が増えており、教科書と新聞を行き来しながら、世の中をどう捉えるかについて考えるトレーニングを続けていきます。
新聞記事を分かりやすく説明しながら、ウイットに富んだ金子先生の2時間の授業は、あっという間だったよ。私もこんなに分かりやすくて楽しい授業を、学生時代に受けたかったなあ。
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