楽しくNIE[32]ワークシートづくりで小中交流 日光市立湯西川小中学校(栃木県)

小学生のことを考えながら新聞記事を選んで、一生懸命ワークシートを作る中学3年生(湯西川小中学校で)

こんにちは。新聞活用学習・NIEのナビゲーター、ヤクだよ。きょうは、中学生が新聞記事を使って、小学生向けにワークシートを作っている学校の紹介だよ。ワークシートで小学生と中学生の交流も深まるんだって。


ヤクは、ユーラシア大陸の高地に生息する、ウシの仲間。NIEを通して、これからの社会を生き抜く上で"ヤク"立つ力が生徒たちにつくよう、ヤク先生が応援していきます。

 


 

 全校でNIEに取り組む 

 今回紹介するのは、栃木県北端にある日光市立湯西川小中学校(芳賀智一校長)。平家の落人が隠れ住んだという伝説が残っていて、湯西川温泉が有名。児童10人生徒11人の小規模校だけど、去年から小中一貫校として新たなスタートを切って、全校で新聞を使った授業に取り組んでいるんだって。特に中学生が新聞記事を1つ選んで、小学生に合わせて作るワークシートは、小中一貫校になったこの学校で、とっても楽しい交流の機会になっているそうだよ。

ワークシートのつくり方について説明を聞く生徒たち

 

 朝のNIEタイムでワークシートづくりも 

 この学校では、気になる新聞記事を選ぶ「NIEタイム」に週1回、朝の15分間を使って、全学年が取り組んでいる。中学生が小学生向けにワークシートをつくるのも2年前から、この時間を使って時々行われているんだって。今月13日に行われたNIEタイムでは、冒頭、中学担任の横塚克裕教諭が、「今日は小学5、6年生が解くワークシートをつくってもらいます」と話し始め、読売新聞ワークシート通信をテレビ画面に例として映し出しながら、中学生たちに問題づくりのコツを説明したんだ。

読売新聞ワークシート通信をテレビ画面に映し、作り方を説明する横塚先生

 

 小学生の気持ちになって中学生がつくる 

 横塚先生の説明を聞く生徒たちの表情は、真剣そのもの。「小年生だったら、どんな記事がいいだろう」って、ペラペラと新聞をめくりながら、記事を1つ選び、用意されたワークシートに貼りつける。さらに頭を悩ませながら、小学生でも解けそうな問題を3問ほど、15分の間にまとめていったんだって。

小学生のことを考えながら、新聞を開いて記事を選び、ワークシートをつくる生徒

 

 小学生が分かりやすい言葉で問題づくり 

 できあがったシートに使われた記事は、月の水が想定より多いと分かったと伝える科学記事、大ヒットアニメ「鬼滅の刃」のニュースなど、小学生が興味を持ちそうなものばかり。小5の4割がSNSを使っているっていう栃木県内のニュース記事なども扱って、とにかく小学生が理解しやすいよう、言葉を選んで問題がつくられていたよ。つくった生徒の一人は「どの記事にしようか、わくわくしながら選びました。問題の言葉もできるだけやさしい言葉で考えました。小学生の子たちが楽しく勉強してもらえたらうれしいな」と楽しそう。

中学生たちがつくった小学生向けワークシートの一部

 

 小学生もワクワク 

 実は、今回の中学生が作ったワークシートを一番最初に解いたのは、なんと小学2年生。担任の先生に手伝ってもらいながら、「鬼滅の刃」のワークシートを1時間かけて一生懸命に解いたよ。2年生の女の子は、「知っている中学のお姉さんがつくってくれたワークシートをやってみたかった。『鬼滅の刃』の問題はおもしろかった。できたのでうれしかった」って、とっても楽しそうに話していたよ。採点してみたら、ほとんど正解。まだ習っていない漢字まで書けてて、すごいな。5、6年生にも「難しい。でも楽しい」「問題がすごく面白くて新聞を読みたくなった」って、大好評だったよ。

「鬼滅の刃」を扱った問題を解く小学2年生の女の子

 

 中学生が採点 

 小学生が解いたワークシートは、問題を作った中学生が採点するんだ。生徒たちは問題をつくるときに模範解答もつくっていて、届いた解答済みのワークシートを見て「まあ、いいかぁ」と言いながら○をつける生徒もいれば、「ちょっと難しかったかなぁ」と反省しながらシートづくりを振り返っている生徒もいるんだって。この取り組みで小学生と中学生の交流が深まっているそうで、ワークシートづくりをアドバイスした横塚先生も、うれしそうな児童生徒たちを見て、毎回、とっても幸せな気持ちになるんだって。

採点後のワークシート。「鬼滅の刃」を扱った問題を小学2年生が解いて、中学2年生が採点した

 

横塚克裕先生

小学生に解いてもらうという、目的意識がはっきりしている課題なので、生徒が取り組みやすいものとなっています。生徒たちは、スポーツや芸能ニュース、地域の行事など、様々な記事から児童が興味を持って読み、問題に答えてくれそうなものを選びます。また、問題を作るには丁寧に記事を読み込まなければなりません。一つの記事を通して「相手意識」と「精読力」を高める良い機会となりました。

芳賀智一校長

近くにコンビニや本屋さんのない、湯西川小中学校の児童生徒にとって、新聞は貴重な情報源です。もっともっとみんなに新聞の良さを知ってもらって、進んで新聞を読む人になってほしいと思っています。そのために、先生たちも頑張ってNIEの楽しい活動をどんどん行いたいと思っています。このワークシートづくりもその一つ。これからも、みんなでおもしろい活動をつくっていこうね。次は何にしようかな?

芳賀先生は、新聞が子供たちの成長に役立つと思って、栃木県内の先生たちを集めてオンラインNIE勉強会を2020年12月12日(土)に初めて開くことにしたんだって。今回の実践も、こうした勉強会をきっかけに、さらに広がるといいね。(写真は芳賀先生提供)


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(2020年11月26日 16:40)
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