《第65回》文部科学大臣賞作品紹介(2)

第65回全国小・中学校作文コンクールの中央最終審査会が行われ、各賞が決定しました。応募は3万5095点(小学校低学年4883点、高学年8081点、中学校2万2131点)。文部科学大臣賞3点を要約して紹介します。(敬称略)


 

<小学校高学年>

「農業体験で感しゃの心が」

宮崎・日向市立日知屋東小5年 安田瑶(やすだ・よう)

 「今年もおいしい野菜をたくさん作るぞ」

 ぼくは右手を高く突き上げました。いよいよ財光寺農業小学校の始まりです。

 「農業小学校ってどんな学校?」。よく質問されました。

 「はい、子ども達(たち)が農業の体験をする学校です」

 「いつ、どこで、どんな野菜を、どのくらい作るの?」

 「はい、毎月第1、第3土曜日に活動します。場所は、この町の西側にある小高い山のふもとにあります。毎年約30種類の季節の野菜を作ります」

 「誰が教えているの?」

 「はい、シニアのおじいちゃん達が先生です」

 平成27年4月18日。子ども29名、シニア生徒9名の第7期生が入学しました。

 学校の農場には、個人農園と集団農園があります。個人農園は、一人あたり10つぼ(約33平方メートル)が与えられます。きちんと区割りされ、一人ひとりの名前が書かれた大きなネームプレートが立っています。集団農園は、みんなで管理をします。広さは約200つぼ(約660平方メートル)もあり、作物はカボチャ、トウモロコシ、サツマイモ、ジャガイモなどを植えます。

 去年の春、ぼくは4年生で第6期生として正式に入学することができました。念願のぼく用の畑をもらいました。

 自分の手で収かくしたトマトは、びっくりするくらい甘く、「トマトって、こんなにおいしいのか」としょうげきを受けました。ピーマンやナスなどにもちょう戦して、スーパーで買う野菜との味のちがいにおどろきながら、どんどん野菜ぎらいがなくなりました。

 自然が相手の農業。楽しみにしていたトマトの全めつ、きずや曲がりくねったキュウリやナス。それに台風。「くやしい!」と思ったことが何度もあります。しかし、喜びもあります。収かくした野菜のとびきりの味、おじいちゃんやおばあちゃん、近所の人におすそ分けした時の顔、支柱にうまくからまった時のキュウリの姿、こんな喜びをあげたらきりがありません。

 ぼくはこの農業小学校で学べることに感しゃしています。農業体験を通して、気持ちをこめて「いただきます」と言えるようになった気がします。

 ぼくがなまけそうになると、しかった両親でしたが、一生けん命にぼくを支えてくれました。いつも一緒に登校し、畑仕事を手伝ってくれる父や母に感しゃしています。

 財光寺農業小学校に通っているうちに、なんだかこの感しゃの心もふえるようになった気がします。「ありがとうございます」の心が。(個人応募)

 

◆講評

 「農業小学校」――この不思議な言葉をていねいに説明することからこの作文は始まります。そして、独特な活動内容、筆者の苦労と喜び、周囲の人々への感謝、すべてが細やかに丹念につづられていくのを読むうち、自然と心が温まります。読み手の立場で書くことの大切さを改めて教えられた気がしました。(石崎洋司)

(2015年12月 1日 17:40)
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