第72回 全国小・中学校作文コンクール 各賞決まる

 第72回全国小・中学校作文コンクールは国内外から6466点の応募があり、中央最終審査審査で各賞が決定しました。部門の最高賞となる文部科学大臣賞受賞者は次の方々です。(以下、敬称略)

 文部科学大臣賞3点の全文は、要約の下の「全文を読む」をクリックしてご覧いただけます。

 

文部科学大臣賞【小学校低学年】要約

「ぼくたち子どもが大人になった時」

森谷陶人[もりや・とうり](静岡県・静岡サレジオ小3年)


 ぼくたち子どもが大人になった時、生き物のことを考えて、よい環境を作っていたい。人々がくらしやすい所があって、そこに生き物にとってもくらしやすい場所がある環境を守っていたいです。

 友だちの中には「気持ち悪い」と虫嫌いな子もいます。中でも嫌われているよう虫ですが、きれいなチョウやガになります。よう虫にはいっぱいしゅるいがあります。

 一番見つけやすいのはアゲハチョウ科のナミアゲハです。かんきつ系の木の葉の上にいて、鳥のフンのようです。チョウになる前のよう虫は、とてもきれいな緑色になります。びっくりすると、黄色い角を出していかくします。この角はみかんのかおりがします。そのかおりをかぐと、ぼくは夏だなあとワクワクします。

 よう虫をそだてて気づいたことがあります。よう虫にもせいかくがあるということです。人間と同じような所があることが分かるのです。

 とくに心配した子がいました。「足弱くん」です。よう虫は一番後ろの足が一番強くて大切なのですが、その足が弱かったので、ぼくはこの子がちゃんとチョウになれるか心配して顔が青ざめました。

 さなぎになる時です。かべにはりつこうとして落ちてしまう。痛くないようにキッチンペーパーをしいたのです。すると、キッチンペーパーにもぐり、さなぎになりはじめたではありませんか。10日後の朝、ぶじチョウになることが出来ました。ぼくにとって幸せでとくべつなことでした。

 虫嫌いな人にインタビューすると、嫌いな理由の多くは見た目の問題でした。そんな人たちにおすすめなのが、ヒメジャノメのよう虫です。きれいな黄緑の体に黒ネコのお面をつけたようなかわいいすがたです。さらにおすすめは、日本の国チョウとして知られるオオムラサキのよう虫です。黄緑のせなかにさくらの花びらのようなものがついています。国チョウのよう虫として、ぴったりだと思いませんか。頭に二本の角が生え、まるでよう虫界のトナカイです。

 理想のまちを考えてみました。チョウがそだついろいろな木を植えた通りには、きれいなチョウがたくさんとび回るでしょう。カブトムシにも会えるかもしれません。チョウやよう虫がいることが当たり前になって、あの生き物にはこの木がひつようだなと考えることが当たり前になってほしいです。

 生き物がすみやすいとり組みが実行できて、まずは30年、次に50年、それから100年と続けたいです。ぼくたち子どもが大人になった時、ぼくたちが生き物のことを考えて、よい街と環境を作っていたい。

(指導・浦野伊吹教諭) 

 

繊細な目とユーモラスな表現

【講評】チョウの幼虫がそれぞれ、こんなに個性的だとは知りませんでした。作者の繊細な目とユーモラスな表現によって、虫嫌いの人も小さな命をいとおしく思うはず。街路樹のアイデアもすてきです。幼虫という小さな存在から出発し、独自の発想で環境の未来について考えた、説得力あるすばらしい作品です。(梯久美子)

 

文部科学大臣賞【小学校高学年】要約

「面倒なわたし大好きなわたし」

亀迫柚希[かめさこ・ゆずき](東京都・聖徳学園小4年)


 わたしは「面倒くさい」人間だ。自分で自分を考えると、矛盾ばかりあるように思える。たくさんの矛盾を抱えている自分は本当に「面倒くさい」。頑張っていることや結果が出たことを力いっぱい褒めてほしい。「凄(すご)いね」って言われたい。承認欲求が強いのだ。

 中学年になって、いろいろな場面で困ったことが同時多発的に起きるようになった。友人たちが喧嘩(けんか)をしているとき、仲裁に入ると、矛先がわたしに向くことが多くなった。誰かが言い合いしている時によく観察してみた。すると、周囲で静観している人が結構いることに気がついた。

 わたしの学校では、隔週で「リーダー・イン・ミー」という授業がある。リーダーの資質ある人間になるため、自分自身を高めるためにはどうしたらよいかを考える時間だ。興味深い教えをいくつか学んだ。

 ひとつが「違いを尊重する」ことだ。公平に判断し、結論に至るまでの過程を大事にする。落ち着いて話し合い、互いに納得する結論を求める。

 次の教えは「話すより聴く」だ。友人の言い合いの仲裁に入るとき、わたしはいったいどんなふうだったか。「なになにどうしたの」と「興味」が前面に出ていなかったか。矛先がわたしに向く理由があったのではないか。静観しているように見えた友人たちは、第三者的な立場で双方を冷静に把握していたのではないか。自分が恥ずかしくなった。わたしに圧倒的に足りないのは「冷静さ」かもしれない。

 たくさんある片付けるべきものをどうやったら全部やり終わるのか。母に尋ねたら、「必要か不必要かをわける。必要なものに優先順位をつけ、あとは順番にやるしかないよ」と言われた。そうか、わたしは優先順位が付けられないんだ。授業中も習い事も友人との関係も、あらゆることにその時本当に必要なことを選べていないから、いっぱいいっぱいになってしまうんだ。

 冷静さも大事。でも、やっぱり「わたしのことをわかってほしい」とアピールすることも大事だと思う。それに、みんなのことをたくさん理解したい。

 わたしは「時間がないのに何でも頼まれて大変だ」と思う反面、「損している」とは全く思っていないことに気がついた。誰かの喜ぶ顔が見たい。そのための努力は、苦ではないのだ。だから、そういう時間を持てるようにどんどん自分を磨いていきたい。

 そうか、わたしは人間が大好きなんだ。わたしは、たくさんの人に関わりたい。わたしは、あれもこれも諦められない。やっぱり「面倒くさい」人間だ。でも、わたしは、そんなわたしが嫌いじゃない。

(指導・川口涼子教諭)

 

自分を客観視 論理的につづる

【講評】「承認欲求」。この言葉をふつうに使い、しかもその強さに手を焼いていると自戒する小学生がいる。それだけでも驚きなのに、そんな自分を冷静に客観視し、ときにユーモアを交えて論理的につづることができる力に舌を巻きました。肯定的な締めくくりもすばらしい。私もこうありたいと学ばされました。(石崎洋司)

 

文部科学大臣賞【中学校】要約

「姉からの挑戦状」

斉藤綾香[さいとう・あやか](栃木県・佐野日本大学中等教育学校3年)


 「純ちゃん、前期の試験終わったって。帰ってくるよ」

 姉は昨年春に歯学部の大学生になり一人暮らしを始めた。5歳の年の差は感じなくなり、一番身近で何でも話すことのできる存在だった。

 姉は少しやせていた。「お腹(なか)痛い。横になれない」。昨年8月13日夜、姉は顔をゆがめた。翌朝、大学病院で受診。帰ってきた両親は小さく見えた。

 「純ちゃんね、お腹に大きな腫瘍があるんだって。先生がすぐに手術したほうがいいと、明日、検査するって」。手術当日。20センチ以上の腫瘍をとったが、残った部分がある。

 病院からもどって来た姉の表情は優しかった。「大丈夫だよ」とほほえみ、私たちは励まされた。9月7日、姉はまた入院した。担当医から「ユーイング肉腫という希少ながんだろう」と連絡が入る。翌10日、国立がん研究センターに転院。心の中で何度もつぶやいた。「良くなるように応援してるからね」。22日、まれながんのさらにまれなもので、有効な治療法が確立されていないそうだ。

 10月20日、姉が帰って来た。「歯学部の学生だって言ったら(歯科の先生たちが)喜んで、ここで一緒に働くのを楽しみにしてるって言うんだよ」。姉は楽しそうに話した。こういう時間が大切に感じられた。母も「看護師さんが言ってくれたの。『純香ちゃんのお部屋に来るの、争奪戦ですよ』だって」。支え、励ましてくれる人、関わる全ての人を大切にするから、姉を気にかけてくれる。姉は病院も居心地良い場所にしていた。

 10月29日、私の誕生日だ。「おめでとう。お母さんと選んだ」と、姉はプレゼントしてくれた。ペンケースとブラシ、バッグにつけてつかう時計。「お下がりのペンケースを使っているから、気になってたんだ」。すごくうれしかった。夜は川の字で寝た。「きっと良くなるよ」。姉の言葉に元気をもらって眠りにつく。

 今年2月18日、担当医から「今までの薬が効かない細胞が大きくなってきました。抗がん剤を変えましょう」と連絡。「今、みつけてもらえて私やっぱり強運なんだよ」。「少しでも良い方へ向かおうというモチベーションにどれだけ救われているか。本当にすごいお嬢さんです」と、母は先生から言われたそうだ。

 4月13日、姉の心臓は止まった。「綾がいてくれて、本当に良かった」。直前まで、姉は私を気にかけてくれた。姉の病気の原因はわかっていない。「もっと勉強して、綾がみつけてみなよ」。姉からの挑戦状だ。突発的に病気に見舞われた人の力になりたい。いつか姉からの挑戦状に答えを出せる日が来ることを願う。

(個人応募) 

 

闘病の姉から多くを学ぶ

【講評】歯科医を目指していた綾香さんのお姉さんは、難病を患い、闘病生活の末に亡くなりました。綾香さんは、痛みに耐えながら明るさを失わない姉の姿から多くのことを学び、考えます。そして、「姉は私に病気の原因を突き止めてほしい」と願い、「挑戦状」を託したと受け止め、力強く歩いていこうと決意しました。(新藤久典)

 

入賞者

■読売新聞社賞

◇小学校低学年

 平沢心美(千葉県・昭和学院小2年)

 高橋璃帆(神奈川県・精華小3年)

 能仁絃葉[いとは](大阪教育大学付属天王寺小3年)

◇同高学年

 高橋蘭(秋田大学教育文化学部付属小4年)

 小塩春菜(京都女子大学付属小4年)

 脇野英士[えいと](福岡県春日市立春日小6年)

◇中学校

 横田玲(大阪府箕面市立第一中3年)

 ファム・リンガー(島根大学教育学部付属義務教育学校8年)

 杉田ヤコブレフ安南[あんな](ジュネーブ日本語補習学校中1年)

 

■JR賞

◇小学校低学年

 出井菫[すみれ](奈良市立登美ヶ丘小2年) 

◇同高学年

 大谷総一郎(横浜市立本町小4年)

◇中学校

 黒田美唯[みゆ](水戸市立石川中3年)

 

■日本テレビ放送網賞

◇小学校低学年

 新井広太朗(埼玉県鶴ヶ島市立栄小2年)

◇同高学年

 岡本紗羅(群馬県高崎市立塚沢小4年)

◇中学校

 佐藤朱音[あかね](静岡大学教育学部付属静岡中2年)

 田代依子[いこ](福岡教育大学付属福岡中3年)

 

■日本書芸院賞

◇小学校低学年

 川畑まい(京都女子大学付属小2年)

◇同高学年

 篠崎綾花(千葉県白子町立関小6年)

◇中学校

 角田繭璃[まゆり](山梨県・駿台甲府中3年)

 

■入選

◇小学校低学年

 山田遥大[はると](盛岡市立桜城小2年)

 久保雄盛(和歌山県橋本市立橋本小1年) 

 岩男美咲(山口県下関市立文関小2年)

◇同高学年

 西形花璃[はなり](福島市立福島第三小6年) 

 松川明愛[めいあ](岐阜県大垣市立静里小6年)

 清永皐樹[さつき](熊本市立秋津小6年)

◇中学校

 小沢萌々夏[ももか](埼玉県・開智中2年)

 藤原海虎[かいと](東京都・安田学園中2年)

 松山柚乃花[ゆのは](宮崎県立都城泉ヶ丘高付属中2年)

 

■中央審査委員

梯久美子(ノンフィクション作家)

石崎洋司(児童文学作家)

新藤久典(元国立音楽大学教授)

土橋靖子(日本書芸院理事長)

木村通子(日本書芸院常務理事)

野田杏苑(日本書芸院常務理事)

 

【主催】読売新聞社

【後援】文部科学省、全国連合小学校長会、全日本中学校長会

【協賛】JR東日本、JR東海、JR西日本、日本テレビ放送網、日本書芸院、光村印刷

【協力】三菱鉛筆

 

入賞作品は2023年3月に発行予定の「優秀作品集」に掲載します。問い合わせは読売新聞東京本社次世代事業部(03・3216・8598)へ

(2022年12月12日 16:27)
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