長崎大熱帯研「エボラ熱最前線」 8校120人議論白熱

全身防護服で登場した鈴木医師

国際貢献のあり方考える

 エボラ出血熱は、なぜ西アフリカ3か国で猛威を振るったのか――。昨年、リベリアで感染封じ込めに従事した医師が4月25日、東京都立西高校(宮本久也校長)で「エボラ熱最前線」と題して国際貢献のあり方を考える授業を行った。読売教育ネットワーク参加校の西高など8校の中高生ら約120人が参加、活発に議論した。

 

 クリーム色の全身防護服に、ゴーグルとマスク。長崎大学熱帯医学研究所の鈴木基医師(43)が生徒たちの背後から登場すると、西高ホールに驚きの声があがった。

 舞台に上がると「患者と接した後の防護服にはエボラウイルスが付着している可能性がある。脱ぐ方法を誤ると感染の危険があります」と話し、10分以上かけてシャツ姿に戻った。

 

 鈴木医師は感染症疫学の研究者であるのと同時に、「国境なき医師団(MSF)」の一員。内戦に苦しむスリランカやパレスチナ・ガザ地区などで活動してきた人道支援のスペシャリストだ。昨年10月から12月まで、リベリア内陸部に設けられたMSFエボラ治療センターで活動した。

 120人の視線を釘付けにした鈴木医師は、エボラ出血熱は致死率が高く特効薬がないが、実は感染力がインフルエンザより弱いことを説明。「封じ込めるには、感染者をセンターに入院させ、接触を減らしていくしかない」と話し、村々を回りながら感染者を探す地道な任務を紹介した。

 

 「1万人もの死者を出した原因は?」    

 感染力の弱いウイルスが、なぜ3か国で拡散したのか。なぜ、アフリカまで日本人が支援に駆けつける必要があるのか。授業の後半は、討論の時間だ。

「1万人もの死者を出した、その原因をディスカッションしましょう」。鈴木医師が会場に呼びかけると、次々と手があがった。

 「患者の葬儀で遺体に触れる風習があったのが原因ではないか」「内戦で社会が疲弊していたから」。事前課題を出され、新聞や書籍、世界保健機構報告書を調べてきた生徒たちの発言が途切れることはない。

 鈴木医師も熱く反応した。「葬儀の風習が原因という指摘が出ました。でも、最後に最愛の人に触れたいという願いは万国共通ではないでしょうか」と訴え、西洋医学と伝統医療が混在し、また公衆衛生が普及していない脆い医療態勢や、感染症への理解不足などの社会的背景を丁寧に語った。

 

海外への医療支援は必要か 議論白熱

 西アフリカで活動した各国の支援者数と支援額のグラフを提示し、海外へ医療支援のために赴くことの賛否を会場に投げかけると、挙手が一気に増えた。

 「医療レベルの高い国として支援に行くのは当然」「資金援助だけというイメージを払拭できる」という肯定派に対し、「今の数で十分」「医師不足の日本国内を優先するべきではないか」と懐疑派も譲らない。単純な賛否を超え、「現地の人々を日本に招き予防教育を学ばせることが大切だと思う」という提案も出た。

議論は内戦が広がる中東シリアへの支援にも及び、「武装テロリストに拉致される危険」「救える命を見捨てていいのか」など多様な考えが交わされた。

30人以上が発言し、まさに"白熱教室"となった授業。その締めくくりに、鈴木医師は「何もしないリスクと、行動した場合のリスクがある。リベリアに集まった医療従事者の多くは、そのバランスを考えていた」と指摘し、多角的な視点と自ら判断する力が国際貢献には必要だと説いた。

 

授業に参加して...生徒たちの声

■都立西高3年「日々の学校での学びとは異なる、全く新しいタイプの授業だ。ディスカッションが刺激的だった」

■埼玉県立浦和高3年「最初は発言するのが怖かったが、白熱する議論に促されて質問することができた。このような機会があれば、また参加したい」

■埼玉県立浦和第一女子高2年「異なる考えを持つ同世代がこれほど多くいるとは。とても新鮮だった」

■鴎友学園女子高3年「エボラから回復した人をMSFの医師が村人の前で抱きしめ、村八分にならないよう体を張る姿に感動した。命をかけて人を救う、医師の理想を見た」

■渋谷教育学園渋谷高2年「日本人として、国際人として、そして個人として。国際貢献を考える本質が見えた」

 

上記以外にも都立日比谷高、都立立川国際中等教育学校、栃木県立宇都宮女子高が参加した。

(2015年5月 1日 05:30)
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