夢だった留学が突然【新型コロナ 学生リポート】(6)

東アジアを中心にコロナウイルスの感染が広がっていた3月上旬。ロシア・ウラジオストクの空港も人は少なかったが、まだ「対岸の火事」といった様子だった

 新型コロナウイルス感染拡大防止のため、政府が小中高の一斉休校を要請してから、1か月が過ぎました。終息の見通しはいまだ見えず、私たち大学生にもサークル活動の自粛や、始業の延期など、様々な影響が続いています。キャンパス・スコープでは、3月16〜19日のリポートに続いて、いま、大学生の生活に起きていることを伝えていきます。

 

帰国か、残留か。悩む日本人留学生

 

 「人がいないしお店も全部閉店。ゾンビ映画みたいだった」。外出禁止令が出されたパリの街の様子を、ある3年生の女子学生が話してくれました。学費を大学が負担する交換留学で渡仏して7カ月。日本の大学からの帰国命令を受け、3月22日に帰国しました。「パリに残っても、ずっと家にいなければならないので仕方ない」。交換留学のため、金銭的な負担が少なかったのが幸いといいます。一方、私費で留学している一般留学の学生の中には、パリに留まる選択をした学生もいました。「費用は自腹なので、もったいなかった」といいます。現在、パリの大学は閉鎖されており、授業はオンラインだけ。しかし、「オンライン授業は卒業単位に換算しない」との発表があり、学生たちには当惑が広がっているそうです。帰国を選んだ別の学生も、復学の手続きなどが複雑なうえ、再渡航のめども立たない状態に、頭を抱えているそうです。

 

 「3か月間、頑張ってきた試験が突然中止になってしまった」と話すのは、モスクワに留学している女子学生です。3月20日に予定されていたロシア語能力試験が突然の中止。政府の決定により、オンライン授業を受けることしかできなくなってしまったといいます。当初は帰国するつもりはなかったそうですが、次第に暮らしにくさを感じることが増えたそうです。ロシアでも「パンデミック」への恐怖が広がる中、地下鉄で「パスポートを見せろ、お前は中国人か」と言われることもあり、3月21日に帰国を決断しました。「欧州人への態度と、アジア人への態度は違っていたようにも感じました」と振り返ります。

 

 突然の帰国で、新たな悩みも生まれました。4月から4年生になり、当初は留学のため予定になかった就活が、「やろうと思えばできる」状態に。コロナの影響で、会社説明会などもすっかり様変わりする中、「ロシアで受けられるはずだったインターンシップも消えてしまい、どうすればいいのか」と話しています。

 

 キャンパス・スコープにも、今年、留学を予定しているメンバーが何人かいます。あるメンバーは「自分の留学先がもしオンライン授業になったら、果たして留学する意味があるのだろうか」と不安を隠せません。新型コロナウイルスは、留学に伴う様々な困難だけでなく、「何のために学ぶのか」という、根本的な問いを、私たち学生に投げかけているのかもしれません。

(上智大学・藤田梨佳子)


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(2020年4月 3日 14:15)
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