1.「平服」がもたらしたもの
横浜国立大学1年 加藤綾音
11月9日、私は天皇陛下の即位を祝う「国民祭典」の祝賀式典に参加した。
天皇、皇后両陛下を一目みたかったのはもちろんだが、人気アイドルグループ「嵐」が舞台に立つことも大きな理由だった。
式典の参加は抽選で、送られてきた招待メールに歓喜した。一方で、服装の注意点として書かれた「平服」の一語に身を固くした。
当日、私は大学の入学式で着たスーツに身を包んで会場の皇居前広場に向かった。案内されたのは、ステージがモニターでしか見えない場所。拍子抜けしたが、この気持ちはあとで覆ることになる。
開会のファンファーレに場内は静まり返った。日本の伝統芸能に合わせ、子どもやお年寄りが笑顔で踊るパフォーマンスでは、国民の陛下を慕う気持ちが伝わってきた。
そして両陛下がお出ましになると、モニター越しとはいえ、鳥肌が立ち、言い表しがたい感情がわいた。嵐が歌った奉祝曲は、作曲者の菅野よう子さんが指揮するオーケストラや、全盲のピアニスト辻井伸行さんの演奏が合わさり、そのおごそかさに圧倒された。
同じ曲を両陛下もお聞きになっている事実が感動を増幅させ、今まで味わったことのない感覚で陛下のお言葉を拝聴した。
最初はコンサートに行くような気分だった自分が少し後ろめたかったが、新時代の到来を心から祝えたと思う。帰宅後、クローゼットにかけたスーツも、「行って良かったよ」と声をかけてくれた気がした。
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