24.怖がらず感じる文化
法政大学3年 鈴鹿希英(イラストも)
「やっべ、ミスった。書き直そ」「あー、インクなくなる。でもここまでは書きたい!」
今年初め、東京で開かれたミイラの展示会を見学したとき、そんな会話が聞こえた気がした。ミイラの声ではない。一緒に副葬された「死者の書」を見て聞こえた声だった。
ミイラに巻くのとは別の包帯に、死者の生き返り方、来世の様子などの絵や、復活の呪文がかいてあった。間違えて訂正した跡や、走り書きしてかすれていく文字など、どれも人間味があふれ、当時の人々が、私の目の前でささやきながら死者の書をかいている感じがしたのだ。
私は小学生のとき、母が愛読する「王家の紋章」という漫画を読んで、古代エジプトにひかれ、ミイラにも興味を持った。現代の女の子がタイムスリップして王様と恋に落ちる物語で、古代エジプトの文化や宗教、価値観に触れることができた。
初めてミイラを見たのは約1年前、ロンドンの大英博物館に展示されていた。
ミイラの棺おけに丁寧に描かれたエジプト芸術を目の当たりにし、不思議な気持ちになった。
東京の展示会でもそうだったが、永遠の命を願う人たちが後世に残そうと奮闘したものを、2000年もの時を経て目にすると、歴史の壮大さを感じた。死者を尊ぶ文化や永遠の命が反映された宝物でもある。
怖がるのではなく、目で見て文化を感じることで、何か新しい発見があるかもしれない。
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