25.ささやかな趣味
武蔵野大学3年 根本佳織
物心ついた頃から絵を描くのが好きだった。チラシやカレンダーの裏側、自由帳、授業で使うノートの隅っこなどには、気まぐれな落書きが残っている。
ささやかな趣味として絵と付き合うのが私にはちょうど良かった。他人に批評されるのが怖く、大学のイベントで配布するしおりやポストカードのイラストを、匿名で描いたこともある。
そんな私が、最近、絵と一緒に文章を書くようになった。
<ただ家族にあいたかったという叫びがつらくて泣いちゃう>
ディズニー/ピクサーの映画「リメンバー・ミー」を見たあと、スケッチブックに書いた感想の一部だ。
家族の絆をテーマにした映画で、音楽好きの主人公、ミゲルが、先祖が暮らす「死者の国」に迷い込み、ガイコツのヘクターと冒険する。スケッチブックには、映画で印象に残ったシーンのいくつかを絵でも残した。
奇術師の山田奈緒子と物理学者の上田次郎が、奇怪な事件を解決するドラマ「TRICK」を見たときも、<普段目線あわない二人が、ここで目線あうのが良すぎて困っちゃうな>などのコメントを、その場面の絵に添えた。
登場人物の表情や、場面の空気は、絵でないと表現できないもの、文章で書いたほうがわかりやすいものがある。絵だけでなく、文章で補完したほうが、自分の気持ちを整理しやすくなった。そのとき何を感じたのかも思い出しやすい。
ほとんど自己満足で終わっていた私の絵も、少しは誇れる趣味になっただろうか。
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