26.本と接する環境づくり
法政大学3年 宮島昌英(イラストも)
高校時代、私は図書委員として、生徒にすすめたい本選びやビブリオバトル(書評合戦)の開催など、様々な活動を行った。
高校の図書館には、学校司書の女性が常駐していた。大学図書館などで司書を務めてきたベテランで、書籍の貸し出し、授業で活用する本の準備や購入、季節や学校行事に合わせた特集コーナー作りなど様々な仕事をされていた。
私たち図書委員の企画などにも常に助言をし、足りない部分を補ってくれた。私が図書委員の活動や人間関係で悩んでいたときは、組織の在り方について学べる本を紹介され、大変参考になった。
文部科学省の調査(2016年度)によると、学校司書が配置されている小中高校は約6割で、少しずつだが増えている。
児童生徒の読解力低下が指摘される中、子どもの読書活動を推進する団体などは、学校司書の配置をより早く進めるよう求めている。
一方で、「学校司書の仕事は、人工知能(AI)で代替可能」との意見もあることを、最近、ニュースで知った。書籍の貸し出しなど多くの業務は、AIが担えるという考え方だ。
だが、AIは、児童生徒と日常的に会話をし、悩みにこたえる本まで選んでくれるのだろうか。本と接し、学ぶ環境づくりには、人間同士の心の通ったやりとりが必要だと私は思う。
私がお世話になった学校司書の女性は、今年の3月で雇用契約が切れ、退職された。学校司書が安定して働くには、雇用環境の整備も必要だと実感した。
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