MyScope 30. 画面と心の摩擦


30.画面と心の摩擦


東洋大学3年 高見澤楓(イラストも)

 

 「まず教科書を読んで理解を深めたら?」
 大学の授業で分からなかった点を相談してきた友人に、私は、電話口で冷たくそう言い放った。
 後輩がSNSに書き込む内容についてアドバイスを求めてきたときには、「写真にセンスがないし、投稿を見た人が何を伝えたいか分からない」と指摘した。
 最近、相手への思いやりの心が、欠けているように感じる。以前より角が立つ言動をすることが多くなった。
 この感覚には身に覚えがある。
 高校3年のとき、私は大学受験の準備で、大手予備校のオンライン講座を受講していた。録画された授業の映像を見る形式だが、時間に縛られず勉強できる点にメリットを感じた。
 国語、世界史、英語の講座を選択し、ひたすら画面と向き合った。知識と問題の解き方を会得し、ウェブ上のテストも受け、成績はそれなりに上昇した。
 だが、講座の相談に熱心に乗ってくれた予備校のスタッフに、「自分で理解するから声をかけないでくれ」などと反抗的な態度をとることも多かった。
 生の人間と接する機会が減ると、デリカシーがなくなる気がした。
 受験生の後期。私は図書館に行って好きな作家の連載エッセーや単行本の小説を読むようになった。
 読了後は、心の豊かさが戻ってくる感覚があり、涙を流すこともあった。
 オンライン授業が続く今、心がやせ細らないよう、また新たな本を探して読むのもいいかもしれない。



29<< >>31

 

(2020年7月 8日 11:30)
TOP