42.フィルムカメラで撮る日常
昭和女子大学1年 渡辺怜奈
昨年の夏、中古のフィルムカメラを購入した。「オリンパス・ペンFT」というマニュアル式の一眼レフカメラで、レンズも付けた価格は5万5000円。アルバイトでためたお金で支払った。
コロナ禍で、にぎわいをなくした東京の街を記録に残したい。そう思ったのが、カメラを買うきっかけだった。撮影するなら、以前から興味があったフィルムカメラでと考えた。
外出時に持ち歩き、最初は何でも撮り続けた。ファインダーをのぞき、露出を決め、ピントを合わせる。「ガシャン」というシャッター音が重厚だ。
デジタルカメラと違い、撮影した写真は、その場で確認できないが、このカメラは通常の2倍の枚数を撮影できるタイプなので、コストは悪くない。
現像すると、ピントがあまくてぼんやりしていたり、明るさが不適切で何も写っていなかったりすることが結構ある。一方で、暗い喫茶店で撮った紅茶のティーカップが予想外の明るさで写っていたときや、展覧会の写真が、フィルムの取り出しミスで赤く感光し、意外と美しく見えたときなどは感動した。
友人たちも被写体になった。着けているマスクに構うことなく撮り続けた。「マスクをはずさないほうが、今ならではで、面白いかもね」と言う友人もいた。
デジタルほど鮮明でない写真は、曖昧な記憶のよう。いつか振り返ってみたときに、懐かしく感じられたらいい。そう思いながら、私はきょうも日常を切り取っている。
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