44. 残された大学生活
昭和女子大学4年 樽谷三奈
「涙も出なかった」
この春、通信関係の会社に就職した友人は、大学の卒業式が終わった後、私にそう話した。会場は参加人数が制限され、両親は出席できなかった。謝恩会やサークルの追いコンなどの行事も中止だった。「大学生活の最後の1年はあっさりしすぎた」と振り返った。
先日、この友人と久しぶりに電話で話した。「職場の同期の子とお昼を食べたよ」。「同期」という言葉が社会人らしく聞こえた。「卒業論文の制作で、文書や資料の作成ソフトを使いこなせるようになっていたことが、仕事でも役立つ」とも語った。
友人は、大学で国勢調査や市場戦略の調査手法を勉強し、「社会調査士」の資格を取得。4年生のときは、担当教員とオンラインやメールでやりとりしながら卒業論文を書き上げた。対面調査の実習はできなかったが、電話で聞き取りをするなどし乗り切ったという。
卒業式は残念だったが、友人はコロナ禍でも努力し、社会に巣立ったと思う。
友人とは中学校の同級生で、大学入試で浪人した私は1年遅れて卒業する。大学では古典文学を専攻し、源氏物語の主人公・光源氏の娘を産んだ「明石の君」をテーマにした卒業論文に取り組んでいる。明石の君の「妻」としての存在意義などを調べているところだ。
自宅で資料を読み、パソコンに向かう日々が続くと、集中力に欠けることもあるが、残された大学生活をいかに過ごすかは自分次第。友人を見習って、私も頑張っている。
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